ピンクのバラに捧ぐ赤い薔薇
□その手を必ず
1ページ/13ページ
「ただいま」
誰もいない薄暗い2LDKに声が吸い込まれる。
中に人がいようがいなかろうが習慣になっていることなので紫苑は特に気にすることなく靴を脱いで入る。
警察の警備体制がしっかりしているのか、高遠とはしばらく会っていない。
「ふぅ…………」
荷物を傍らに置いてソファーに体を沈める。
そのまましばらく身動きせずじっとして休憩すると、郵便受けに入っていた手紙を確認し始めた。
ダイレクトメールが数通と地域の催し物の案内のチラシ、そして一通のハガキ。
差出人は紫苑の母校である小中高一貫の学校。
少子化に伴う学校の統廃合で小学校が廃校になるのに合わせて行われる同窓会の招待状だった。
実家ならまだしも1人暮らしをしているマンションに招待状が送られてくることに疑問を持ちながらも、小中学校時代にあまりいい思い出のない紫苑は参加しないつもりでいた。
しかし一週間後の週末、紫苑は同窓会の会場であるホテルに足を踏み入れることになる。