ピンクのバラに捧ぐ赤い薔薇
□薔薇十字館殺人事件-後編-
3ページ/23ページ
「あなたは高遠遙一さん……ですね?」
「あ……」
「え……」
「高遠って……」
「まさか……!」
その名前を聞いて知らない者はいなかった。
それもそのはず,高遠の起こした事件は大きなものばかりだ。
「た……高遠遙一って逃亡中の殺人犯!!地獄の傀儡師とか名乗ってるイカれた殺人鬼か!?」
「うそ!?」
「この人があの…!?」
皆に動揺が走る中,月読は遠山が高遠だと気がついた理由を言った。
「さっき金田一さんが高遠って呼んでいたわ。それで思い出したの。どこかで見た事がある顔だなと思っていたけど…」
「金田一のバカ」
バレた理由を知って紫苑はため息をつきながら言うと。金田一はごめんと手をあわしてきた。
その様子を見て冬野は信じられないと言った風に言う。
「金田一君!それに雪峰さんも!あんたたち知ってたの!?」
「あ……いや…!!高遠の事を黙ってたのは謝る!!だけど高遠は今回の事件の犯人じゃない!こんな頭のいい奴が自分に真っ先に疑いがかかりそうな計画を立てるはずがないんだ!」
「おやおや」
この状況に焦りながらも高遠をかばう金田一に,高遠は驚いたというように口を開いた。
「まさか君にこんなに庇ってもらえるとは思ってもみませんでした」
「そーじゃなくて!」
「高遠さんは余計な事言わないで。さらに混乱するから」
「それはすいませんでした紫苑さん」
「とにかく,この一連の事件の犯人は高遠さんではありません。彼がローゼンクロイツと名乗る人物から手紙を受け取っている現場を私は見ています」
「もういい!」
金田一や紫苑の弁解も空しく,佐久羅は2人の言葉を遮ると,懐からナイフを取り出した。
「みんな,その男から離れろ!」
「な…何する気だ。佐久羅さん!」
「っ……」
金田一や紫苑がナイフを見て驚く中,佐久羅は毛利に鍵のかかる,内側から開かない部屋を聞き出す。
遊戯場に高遠を閉じ込めることに話が進んでいく中,高遠はそっと紫苑に耳打ちした。
「皆さんに従って離れたほうがいいですよ。紫苑さんまであらぬ疑いを向けられる必要はありません」
「……分かった」
じっと高遠を見つめてから紫苑はそれに従って金田一たちのそばに行く。
高遠は金田一に一瞬だけ視線をおくると。毛利に後ろ手に手をしばられて,佐久羅にナイフを突きつけられながら遊戯場へと連れていかれた。