ピンクのバラに捧ぐ赤い薔薇 side story

□ハッピークリスマス
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最近、紫苑さんの様子がおかしい。

具体的には先日、街中で出会ったときからどこかよそよそしくなりました。

ときどきお家にお邪魔した時は慌てて何かを隠すような物音がしますし、普通に会いに行った時はどこかそわそわしています。

休日もいつもは家にいる時間にも出かけているようですし………………―――



窓をたたく雨音を聞きながら紫苑のいないリビングでソファーに座って本を読んでいた高遠は玄関のドアが開く音に顔を上げた。


「……ただいま」

「おかえりなさい、紫苑さん」


リビングに入ってきた紫苑が高遠を見ると、いつものように少し呆れたような、あきらめたような雰囲気で高遠に声をかけた。

高遠はそれに気分良く答えると、立ち上がって紫苑に近づいた。


「急な雨でしたけど、大丈夫でしたか?」

「ええ。傘がなかったからどうしようかと思ったけど、途中でっ!?な、なに?」


高遠は何かに気がついてハッとすると、質問に答えていた紫苑の首元に顔をうずめた。

突然のことに驚いた紫苑は目を白黒させる。

しばらくして高遠は顔を離すと、怒ったような表情でぽつりと言った。


「……どこに行ってたんですか?」

「どこって……美雪のところ」

「それだけですか?」

「どういうこと?何が言いたいの?」


鋭い視線の高遠の言いたいことが分からずに怪訝な顔をした紫苑に、高遠は顔をあげると少し強い語気で言った。


「最近、毎週のように出かけているようですがなぜですか?」

「…………教えたくない」

「それは明智警視に会っているからですか?私に七瀬さんのところへ行っていたと嘘をつかないといけないようなことを彼としているからですか?」

「はあ!?」


怒りを含んだ目をした高遠に両肩を強くつかまれて、痛みで顔を歪めていた紫苑。


それに虚をつかれて手を緩めた高遠に少しため息まじりに紫苑が尋ねる。


「どうしてそう思ったわけ?」

「紫苑さんに明智警視の香りが移っているからです」

「ああ、なるほど」


高遠の言い分に 紫苑は大きなため息をつくと、そのままの姿勢で高遠をまっすぐに見つめて言った。


「別に高遠さんが考えているようなことじゃないから。美雪の家から帰る途中で雨に降られて困ってたら明智さんに偶然会って、濡れてるし風邪ひいたらいけないからってことで少し家にお邪魔しただけ。ついでにここまで送ってもらったの」

「……」


紫苑の話を聞いて高遠は安心したような、でもどこか悔しそうな顔をして、はあっと息を吐きながら紫苑の肩に額をのせた。

紫苑はどうしたものかと思いながらもそのまま立っていると、高遠が呟くようにして言った。


「では明智警視とは」

「言ったでしょう?なにもない」

「そう、ですか…………では毎週、七瀬さんのところに行って何をしているのです?」

「言わない」

「……」


じっと見つめても紫苑には言うつもりはないらしく、さすがの高遠もあきらめて早とちりで大騒ぎしてしまったことを謝って手を離した。



そのあとも何度か釜をかけてはみたものの紫苑意思は固く、結局なにもわからずじまいに終わった。



 
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