桃色の愛

□船長の弟
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食卓の間へ入ると、美味しそうな匂いが鼻先をくすぐった。
広い食卓にずらりと並べられた料理の数々が視界を鮮やかに彩る。



「コラさんお帰りさない!」



ベビー5の声が聞こえるな否や、コラソンさんは踏み出そうとした足を何故か滑らせ派手に転倒した。

何もない床で!?ど、ドジなのかこの人。



「こけたこけたー!」

「こけただすやーん!」



面白そうに笑うベビー5とバッファローに視線を投げると、起き上がったコラソンさんが素早い手さばきで二人の頬を叩いた。



「きゃッ!」

「べふ!」



二人がそれぞれ床や壁に頭をぶつける様子に目もくれず、コラソンさんは定位置の席へ腰を下ろした。
私はと言うとその光景にただ唖然としてその場から動けないでいる。



「バッファロー、ベビー5もあまりコラソンに構うな。そうやって毎回叩かれるんだから」

「やだー!だってコラさん面白いもーん!」



起き上がった二人も揃って自分の席につく。確かこの人はセニョールって名前だったかな?
こうやって見るとこの面々ってすごく個性バラバラ、どうして仲良くやっていけるんだろう。

首を傾げながら考えていると上から急に摘み上げられた。



「わァッ!」

「べへへへへ!んねーんねー!こんな所で突っ立って何してんだシアー??」

「トレーボルさんッ、ちょっと下ろして下さい!あと近い!」

「近い?んん?近い?だけど!?」

「それもいいが、トレーボル。そいつをこっちへ連れて来い」

「べへへへへへッ!」



椅子に深く腰掛けた若様の一声で、機嫌がよくなったトレーボルさんがベッタベッタと独特な歩き方で私を若様の傍まで連れて行く。ストンっと落とされた席はまさかの若様の隣だった。
右手にはディアマンテさんが座っている。



「お前の定位置だ。覚えておけ」

「はいッ」

「フッフッフッフッフ!さァて、今日は派手にいこう!」

「皆で夕食なんて久しぶりざますね!」

「腹減ったイーン!」

「行儀が悪いぞバイス」

「若様!早く早く!」

「フッフ、あァ――乾杯」



手にしたグラスを高々と持ち上げてそう一言、そんな若様に一同揃ってグラスを掲げ「乾杯!」と口を揃えた。
ん?待って、ベビー5とバッファローまでワイン持ってる!?デリンジャーはさすがに哺乳瓶だったけど。



「あれは食前の挨拶用だ、アイツらはまだ飲まん。お前も持て」



若様が投げた視線の先には、私用に用意されたグラスがあった。
おずおずとそれ持つと、若様がスッっと手にしたグラスを私の前に翳す。

少し遠慮気味にグラスを傾けると、キンッ…と控えめな音を鳴らしてグラス同士がぶつかった。



「鱈腹食えよーシア!ピザとか食ったことあるかァ?」

「エレファントマグロのオーロラソース仕立て!美味しいざますわよ〜♪」

「これも美味しいよ!ねェバッファロー!」

「美味いだすやん!あとソーセージ絶品!」



広い食卓には端から端まで料理が並んでいる為、届かないものもある。
けどそれは手を伸ばしてディアマンテさんが装ってくれた。



「ありがとうございます」

「コラソン!お前好き嫌いせずにしっかり食べい!」

「……もぐもぐ」



ラオGさんの忠告に耳も向けずひらすら料理を口に運ぶコラソンさん。
そんなコラソンさんの頭をぐりぐりと弄りながらソーセージを貪るトレーボルさん。

みんな楽しげに食事をする。
そんな様子を眺めているだけで私も楽しくなって、口に運んだ料理にも目が輝いた。



「美味いか?」



私の様子に気づいた若様の声が降ってくる。
その声に元気いっぱいに頷いて「美味しいです!」と答えたら、若様がフッと笑って「そうか」とワインをいっきに呷った。




がやがやと騒がしい食卓が、すごく気に入る日になった。



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