miserable elegy
□雨音混じりの再会
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店から飛び出して歩き慣れた道を駆け抜けた。
さっきより日も落ちて寒さが増す時間だというにも関わらず、私は走るのに必死で逆に火照ってきた体に笑みが零れる。
見せてもらった写真に写っていたローは姿形に変わりなかった。
歳が私より二つも下だという事には驚いたけど、そんな事よりもやっと会えるんだと思ったら胸が高鳴って仕方ない。
息切れが鼓膜に響くように伝わる。
資料に載っていた店の外見には見覚えがあったけど行った事はない。
そこの店主はおそらく“麦わら海賊団”の専属コックだった“黒足”のサンジだと思う。
先日の入学式で現代版“麦わら”ご一行が話していた店に違いない。
それに、ローと“黒足”のサンジは同じ北の海出身だった。繋がる、全て。
「――ッ、あった!オールブルー!」
まだ人の賑わいが消えない町の中で構えらえた小さなレストランカフェの前で足を止める。
お洒落な造りのその店は、どこか青い海を思わせる外見で、中から聞こえてきた笑い声に口元が緩んだ。
入口付近に立ってある折り畳みの看板に「海上レストラン“バラティエ”系列店」と書いてある。
聞き覚えのある名前のレストランだった。
やっぱり、みんなそれぞれに繋がりがあって、どんな形でも絶たれる事はないんだろう。
乱れた息を整えるようにゆっくりと深呼吸をした。
まさか彼に会うって事がこんなにも緊張するだなんて、前世ではあり得ない感覚だ。
「―――よし!」
思いを固めて、私はレストランのドアへ手をかけた。
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