妄想(?)
□生誕祭より
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ベットに潜ったのは0時をまわった頃だったのだが、今はAM2:00。
隣のベッドからは同じ時間にベッドに入ったはずの人の寝返りやため息の音が聞こえてくる。
今日はヒョンの不安が大きい日らしい。そんな日はこうやって何時間も眠れないままでいるのだ。
「…眠れない?」
「…サンミナ…もしかして起こしちゃった?ごめんね」
少し明るく返ってきた声。しかし質問に対する答えが返ってこず、あぁ話を逸らされた、と思う。
これでは眠れないと言っているようなものじゃないか。
ヒョンが眠れない時には決まってかける言葉がある。
今日もいつものように軽く声をかける。
「ヒョンこっちおいでよ」
声をかけられた本人は泣き出しそうな顔をしながらも、どこかホッとしたようにつぶやく。
「…サンミンが迷惑じゃないなら…そっちいっていい?」
何度もしてるやりとりなのにこちらを気にかけてくれる、そんな優しさが好きだ。
「迷惑だなんて思わないよ」
ゆっくりと起き上がって、
「……うわ…今日寒いね」
と自分を抱きしめるように僕のベッドまでやってきた。
「…おじゃまします」
ヒョンのひんやりした足が当たる。氷のような冷たさで、これは眠れないだろう…と、眠れない原因の一つがわかった気がした。
「うわ、手も冷たい…ヒョン寒かったでしょ?」
あまりの冷たさに思わず笑いながらヒョンの手を擦って温める。
ヒョンは自分の手に体温が戻っていくのが心地いい様で、目を閉じて微笑んでいる。
喉を撫でられて喜んでいる猫の様だと、ふと思った。
「サンミンの手はいつも温かいな…落ち着くよ」
ヒョンの口からぽつりと呟かれた言葉に、俺はこの人を安心させてあげられるということがわかるから、嬉しかった。
温めていた手の片方をヒョンの頭に持っていく。
「…今日も頑張ったね、ヒョン」
そう言いながらゆったりと手を動かし、ハネている髪を撫でていく。
「ありがとう、サンミナ…」
きゅっと遠慮がちに、でもしっかりと抱きしめてくる長男は、僕より少し大きいはずなのに今は小さな子どものようで愛おしく思える。
「僕がいるから、ゆっくり休んでいいよ」
耳元で優しくゆっくりと囁く、と同時に背中をトントンとあやしてやる。
これがヒョンにとって一番安心できる環境で、お休みの合図でもある。
「…ん……おやすみ…」
腰に回された腕の力がだんだん緩むのを感じながら、その暖かい体温にこちらも眠くなってくる。
実は僕にとってもこの瞬間が安心できる時だったりするのだが、いつも少し遠慮がちにベッドに入ってくる様子が可愛いので言わないでいる。
こんな弟でごめんね。他の兄さんやマンネには渡さないから、俺だけ頼ってよ?
隣で寝息を立て始めた兄の温もりを感じると不思議と自分も眠くなってくるのがわかった。
「今日もいい夢みれそうだな…」
おやすみ、僕達のかわいいヒョン。