妄想(?)

□くろすじん
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明日のスケジュールのために今日はリハーサルを終え、先ほどホテルに戻ってきた。

「セヨンヒョン〜もう寝ようよ〜」

久しぶりにセヨンヒョンと同じ部屋なんだけど、セヨンヒョンは化粧水をペタペタ塗ってるところだ
。他にも乳液だ保湿クリームだなんたらって言ってたけど、俺にはさっぱり。
「もうちょっとだから先にベット入ってなよ」
相変わらずペタペタしながら鏡ごしにそう言ってきた。
薄着で肌寒く感じていた俺はヒョンのお言葉に甘えてベットでケータイをいじっていた。

どうやらペタペタは終わったらしく、セヨンヒョンがベットに入ってきた。
「あー、今日寒いなー」
入ってくるなり体に毛布を巻きつけて丸まっているヒョンが可笑しくて、ちらっと出ていた頬を触ってみた。
「むにむにーつるつるー」
「サンミンやめろって、くすぐったい」
頬に置いた手を払うときの不機嫌そうな顔が面白くて何度かそのやりとりを繰り返した。

「あー、なんで俺こんなセヨンヒョンのこと好きなんだろ」

こうやってじゃれている時間がたまらなく好きだった。
特にセヨンヒョンはメンバー内で一番のお兄さんと言うこともあり、甘えやすいのもあったのかもしれない。他愛もないやりとりが心地よかった。

「セヨンヒョンも俺のこと好きでしょ〜」
他のメンバーにも言うノリでわざと甘えた声を使って呼びかける。
しかしその膨れた毛布から返事はない。
「ひょんー?」
返事がないことが少し不満で、毛布をちらっとめくってみる。

そこにいたのは真っ白の肌を耳まで紅く染め、潤んだ瞳でこちらを見つめてくる兄だった。
その姿を見たとき、少し、少しだけ、今までより大きな音が心臓から聴こえた気がした。

「…っ…ヒョン?毛布こっぽりかぶってたし、暑かった…?」
そんなことはない、気のせいだ。そう自分に言い聞かせてヒョンに声をかける。

潤んだ瞳が真っ直ぐにこちらを見つめたまま、口が小さく開いた。…セヨンヒョンの口ってこんなに可愛かったっけ?

「……サンミナ、俺のこと好きか…?」

「…ん?え…う、ん」
返事を噛んでしまったことが何故か気恥ずかしくて、少し早口になりながら「そんな、好きに決まってるじゃん!急にどうしたの?」と笑って見せた。

その言葉を聞いたヒョンがゆっくりと毛布を脱ぎ、起き上がっていく。次の瞬間、横を向いていたはずの俺は 天井を背にしたセヨンヒョンを見上げていた。何が起きたのか、俺の脳は思ったより鈍感で、素早く現状把握する能力は持ち合わせてないようだ。
しかし しばらくすると頭も冷静に判断できるようになったらしく、息がかかる距離にヒョンの鼻筋の通った綺麗な顔があった。
先ほどの感覚が蘇る。なぜこんなに心臓が活発に動いているのか。

お互い無言のまま見つめ合うだけで数分ほど経っているように感じたけど、きっと数十秒の出来事だったんだと思う。
その静寂を打ち破ったのはヒョンの指で、僕の顎をかすめ壊れ物を扱うような手つきで優しく頬を包み込んだ。

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