+零崎遥織の人間欺瞞+
□stage1
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リビングに入り、キッチンのそばに寄る。
すると背後から男の声がした。
「鋏だけでこんな見事に殺すとはすごいね。殺しは初めてかい?」
『…ふふふ。そうですよ?今日がはじめましてです』
そう答えてからゆっくりと後ろを振り返る。
そこには、針金細工のような体躯に黒く長い髪をした男と肩につくくらいの長めの黒髪に可愛い顔した頬に刺青が入った華奢な男の子がいた。
『あらあら、ふほーしんにゅーですわよ?針金のおにーさんと可愛いおにーさん』
「おい、その可愛いおにーさんってのは俺のことじゃねぇよな」
「人識くん聞いたかい!?おにーさんだって!いやぁ、やっぱり可愛い女の子から兄と呼ばれるのはいいねぇ」
あらあら?
『可愛いおにーさんはダメでした?んじゃあチビのおにーさん』
「喧嘩売ってんのかテメェ!てかお前の方がチビだろうが!」
「私のことも!私のこともお兄ちゃんって呼んでくれないかい!?お兄ちゃんって!」
わーわーと喚いているおにーさんとハァハァとキラキラした眼でこちらを見てくるおにーさん。
んー。なんだろこの感じ。
『それで。おにーさん達はどうしてここに?ここには何も楽しいものはありませんわよ』
何か違うっていうか、この人達に感じるのは嫌悪感とかそういうのじゃなくて…。
この人達は…。
「ふふふ。それはね、君に会いにきたんだよ!」
『…会いにきたんだよ?私に?』
「そうだよ。君、
私の妹にならないかい?」
変態さんでしたのね。
『困りましたねー』
「あれ?どうしてそんな引いたような目で見てくるんだい?どうして少しずつ後ずさりしてるんだい?」
「引いたような目じゃなくて明らか引いてるだろ…」
「引いてる!?どうしてだい!?はっ!まさか人識くん…この子のこと邪な目で見たんじゃ」
「テメェの発言に引いてるんだよ!!俺はそんな目で見てない!」
まさか変態さんだったとは…。危ない危ないまた襲われちゃうー。
『ふふ。でもごめんなさい。私やらなきゃいけないことあるので…』
私はキッチンの上に置いてあった包丁、フォーク、スプーン、箸、フライパン、鍋を2人に向かって投げつける。
「うぉ!」
「おっと」
2人は軽々と避けるが私はその避けた隙に2人の横を過ぎて玄関に向かう。
『これにてバイバイです。また縁があう日まで』
そして私は家を出て真っ暗な街を駆け抜けた。
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