家×三

□守りたかったのに、
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守りたかった。
だけど、殺してしまった。
この命は、もう戻らない。
今まで、ずっと優しくしてくれたのに。
私はなにも返すことなくその命を尽きさせた。

「家康………起きろ……」

いつもなら、ムクッって起きてくれるだろう?
あの爽やかな笑顔で
「まだまだだなぁ」
って言って、頭を撫でてくれるだろう?

「やれ、三成、死人に話しかけるな。」

「刑部、私のことは放っておけ。」

「ヒヒッ…先に行っておくぞ。」

家康…苦しい…
貴様の事を想うと、胸が痛い…
痛い…痛い…苦しい…苦しい

「私は、これから何を想って生きていけば良いのだ……」

「…」

「答えろ……答えろ家康!!!!」

当然、答えることは無いのだが…。

「家康ゥ…家康ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」

家康を殺してから、自分がどれ程家康を愛していたかがわかる。
何時も向けてくれたあの笑顔も。
何があっても優しかったあの性格も。
時にはムカつくくらい頑固な気も。
嫌だ嫌だと言いつつ、本当はその逆。
好きだった。

「今まで貴様の笑顔が支えになっていたのに……………
何を支えに生きていけばいいんだ……教えろ…教えろ家康…」

支えになっていたものが消えた今、何を支えに生きていけば良いのだろうか…




でも………




全ては………




自業自得。




全て自分でやったのだ。
全て自分の意思で殺ったのだ。
自分で過ちを犯して、それを家康が起きないから、と、家康のせいにして。
家康はこんなことしなかった。
私が犯した罪まで、家康が背負ってくれた。
そう考えると、家康がどれだけ偉大な奴かが良くわかる。
それと同時に、自分がどれ程惨めな奴かが良くわかる。

「家康…好きだ……大好きだ……」

そうか、私も、一緒に死ねばいい。
こんな惨めな奴が全国統一したって、誰も嬉しくない。
だから、一緒に死ねばいい。

「家康…迎えに来てくれ。」

「三成…」

「なんだ刑部。」

「いや、なにも。」

「そうか…」

「せめて幸せでな…」

「……」

覚悟を決め、自分の腹に愛刀を宛がう。
家康は、迎えに来てくれるだろうか?
あの笑顔で、また抱き締めてくれるだろうか?
そんな不安と期待を胸に、一気に刀を刺した。
痛い…
目の前が白くなっていく。
瞼が重い。
眠たい。
いよいよ死ぬのだ…
あの世に行ったら、家康にずっと慕っていたことを、素直に伝えたい。
ああ、だめだ。
身体に力が入らない。

「いえ…や、す……」

最後に一言呟いて、自分の意識は無くなった。


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「三成…おかえり。」

「家康……家康っ!!!!ずっと慕っていた!!!素直に言えなくて…ほんと…」

「知っていた。三成の気持ちは初めから知っていた。」
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「イッヒッヒッヒ…遂に殺りおったか。」

三成の死体を眺めながら、刑部こと、大谷吉継は、一人呟いた。

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家三始めましたプロジェクトの第一作品目が暗い!

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