幸×政(サス×コジュ)
□言われて気付いた
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「政宗殿…」
「ah?なんだ?」
「物欲しそうな目をしておる。」
「んなことねぇーよ」
「いや、確かにしておるのだ」
「今更何を欲しがるんだよ。子供の頃与えられなかった『愛』か?それとも他人の『温もり』か?はたまた、何でもしてくれる使いや奴隷か?…いずれにせよ今の俺にはいらねーな。」
「左様でござるか…」
この時、政宗は幸村の悲しそうな瞳を見た。
その瞬間、心の中には、昔、心の奥底に閉じ込めたハズの感情があった。
その感情の名は、
『恋』
あの時、母親に言われれた
「お前の恋なんて叶うわけが無いんだ。だからそんな感情は捨てろ。」
だから、奥底にしまいこんだのに…
これじゃあしまいこんだ意味ないじゃん。
お前が呼び起こしてしまったら…
「政宗殿…?大丈夫でござるか?」
「へ?あ?ごめん、呼んだか?」
「呼んだのではありません。…政宗殿が涙なんて流しているから…」
「涙…?」
ああ、そういえば目の前がボヤけている。
そして頬には生温い物が伝っている。
泣いていたんだ…ホントに。
ボーッとしていると涙より温かい物が頬にあたった。
ああ、幸村の手だ。
温かい。暖かい。
俺の流した涙をその手で拭き取ると、輪郭をなぞるようにその手が動く。
そして目が合った。
幸村が優しく微笑んでる。
こんな俺に微笑んでくれてる。
だけど俺の表情は、反対で、泣いていて。
「苦しいのでしょう?辛いのでしょう?昔の悲しい事なんて忘れて下され。今、泣きたいならば、とことん泣いて下され。この幸村が全て受け止めます。」
そう言って俺の肩を抱いて、
「好きです。政宗殿…」
と、連発している。
こんな時だけ
「破廉恥でござる」
は無しか。
俺も幸村の背中に手を回してとことん泣いた。
そして幸村の暖かさに眠気が襲ってきて、寝てしまった。
意識が無くなる前に、
「目覚めたら、返事が欲しいでござる。」
と、聞こえた気がする。