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□アイ1 -後編-
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「なあなあ、二階堂?」
「なんだよ」

今日はどんなことをして木川を鳴かせようかと考えていると、花山に声をかけられて肩を組まれた。

「二階堂君さあ、オレに何か隠し事してなあい?」
「隠し事?」
「またまたあ、とぼけちゃって」
「ちょ、いい加減離れろよ、気持ち悪いだろ」
「あ、ひどい。ほんのコミュニケーションじゃない」
「男に顔近づけられたらキモイだろうが」
「ひどい!ちゃんと歯磨いてるのに!」
「知るか!」
「・・・まあ、冗談はさておいて」

調子のよい花山にコロリと話題を変えられる。
とりあえず離れてほしい、肩組むくらいはかまわないけど顔が近すぎだろうが。

「二階堂さ、恋人できたんだろ」
「は?」
「とぼけんなよー、最近つきあい悪いわ機嫌いいわで、わかりやすすぎだろ」
「・・・・オレ、そんなだった?」
「むーいーしーきー!どんだけラブラブだよ。イケメン二階堂君をそんな風にした子ってどんな子よ!?紹介してよー!」

花山の言葉が理解できなくて首を傾げる。
確かに花山や他の友達との付き合いが悪くなったのはわかっている。
いつもいつも木川と昼食時に犯るわけにいかないから、放課後犯ることも多くて、必然的に他の友達と遊べなくなっている。
他のやつと遊ぶより木川と犯るほうがいいとは言いづらい。
それに、連日抜いていれば機嫌もよくなるし・・・そうか、他から見ればオレは順調なおつきあいをしているように見えるのか。


うーん、誤解されたままでもいいんだけど、そうなると花山の追及が面倒くさそうだ。
それに木川とはつきあってるわけではないんだし。

「付き合ってる人なんかいないよ」
「は!?マジで??」
「何でそんな驚くんだよ?」
「えー・・・だってさ、二階堂、たまにすっごい優しい笑顔浮かべてるときあるんだけど、それって彼女のこと思い出してんじゃないの?」

腕を組んで腑に落ちないとしきりに首をひねる花山に、オレの方こそ首をひねりたくなるよ。
そんな風に笑ったつもりなんかないし。

「えー?えー?オレ今日こそは問い詰めるつもりだからさ、誤魔化そうとしてもそうはいかねえよ?」
「いやいや、マジでマジで」
「付き合ってる子はいない、と?」
「うん」
「・・・んでも、オレとの付き合いが悪くなった何かがあるんだよな?」
「何でそんなに尋問方式なわけ??」
「そらおまえ、イケメンに彼女ができたら友達としては気を使わないといけないだろ?」
「イケメン関係ないよな?友達としての気遣いってことか?」
「んー、まあ、そんなとこ」
「・・・・」
「まあまあ。んじゃ、気になってる子と仲良くできてるってことか」
「・・・はあ?」

うんうん、と花山が勝手に自己完結している。
一体何なんだ?
付き合ってる子も気になってる子もいないんだけど。
木川がそうだとでも?
ちらりと考えてみたけれど、何故か機嫌が悪くなった。


「・・・もしや、無自覚?」
「さっきから何なんだよ。そんなんじゃないって言ってるだろ」
「・・・やだ、二階堂君ってばもしかして初恋!?」
「は!?」
「そうか、あれか。イケメンだから恋したことがないってやつだな!恋なんかしなくても相手から股開くもんな!」
「・・・言い方悪いな、花山・・・」
「はあ、無自覚でハマるとか、メッチャ本命じゃん。早くくっつくといいな」
「いやいや、完結しないで。ホントそんなんないから」
「二階堂は気付いてないだけだって。なんか、前と変わってるんだぜ?」
「は?」
「二階堂って人当りいいし誰にでも優しいけど、なんか一線引いてるってか壁がある感じだったんだけどさ」

何気なく花山に言われてドキリとする。
思い当たることがあるから、苛立っていた気分が一瞬引いた。

「でも最近、そういうのなくなってさ。オレとしては嬉しいわけよ。そんな風に二階堂を変えた子って気になるじゃん」

ニコッと邪気なく笑われて、つい花山の友情を信じたくなってしまった。
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