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□二日目 前編
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僕が目を覚ましたとき、ここがどこかわからなかった。
日は既に昇っていて、明るい室内だったけれどあまり見覚えがない。
体を起こそうとして、きつい倦怠感にベッドに逆戻りした。
ああ、ここ、小磯の部屋だ。
ぼんやりと昨日の記憶を思い出す。
恐怖を感じることに麻痺したのか、昨日の様に震えたりしない。
視線を彷徨わせたけれど、部屋の主はいない。
そういえば、小磯の寝顔なんか見たことがない。
見たいとも、見る必要があるとも思わなかったから。
どうせ無駄に整ってるだけだろうし。
--ガチャ
扉が開く音に体が震えるのは、もう仕方がないかもしれない。
この時間、扉を開けるのは、僕か小磯しかいないから。
「おはようございます、坊ちゃま」
震えながら小磯を見れば、朝食を持ってきたのだろう、トレーを手にしていた。
昨日のような愚行は犯さない。
小磯はトレーを自分のデスクに置くと、当たり前のように僕をベッドに座らせて寄りかからせた。
細かな震えはバレてるだろうけど、それに触れることはなかった。
今朝は洋食。
ライ麦パンとシチューが乗っている。
小磯はパンをちぎってシチューに浸すと僕の口元へ運ぶ。
それに抵抗せずに口に入れる。
口元についたシチューを指で拭うと、小磯は自分で舐めとった。
それに淫靡を感じて、勝手に顔が赤くなる。
近くにいた小磯に当然バレるが、くすっと笑われただけだった。
大人しくしたからだろうか?
もう小磯は僕に変なことはしないのだろうか?
このまま言うことを聞いておけば。
ここから出してもらえるかもしれない。
いつも通りの日常に戻れるかもしれない。
小磯はその後も僕に朝食を食べさせ、シチューが口元につくたびに指でふき取って舐めている。
さすがに何度も繰り返されれば慣れてくる。
食事が終わるころには、もうそれが当り前なことだと思えたほど。