短編だったりシリーズっぽかったり

□雨籠-あまごもり-
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ガチャ・・・バタン


急に振り出した雨にすっかり濡れてしまって、ネクタイを緩めた。

「・・・くっしゅん」

体温さえ下がってしまって急いでシャワー室に向かった。

・・・ただでさえ、雨は苦手なのに・・・

「今日は止みそうにないな・・・」

脱ぎにくいスーツを脱ぎ捨ててシャワーを頭から浴びてゲンナリと溜息をついた。


・・・昔から、雨の音が、匂いが、苦手だった。


元々ポジティブとは言い難い自分の性格がさらに下降してしまう。
シャワーを浴びながら鏡を見れば、情けないほど眉の下がった自分の顔。
キュッと曇りを拭ってしみじみと自分を見つめる。

20半ばを過ぎて、それなりに仕事をこなして経験を積んできた。
人付き合いも人並みで、過去には恋人と呼べる女性もいた。

最近忙しかったせいか肉付きの悪い体がさらに貧相になった。
外に出ているのに一向に焼けない肌。
髭すら生えない自分の外見に多少のコンプレックスはあれど、それでも不自由はなかったはずだ。

けれど、微かな自尊心もプライドも、雨の音を聞くとグズグズと溶けていく気がする。

「・・・くそ」

体が温まってから風呂場から出る。
乱暴に体を拭いて部屋着に着替えてリビングに向かう。
外を見たくなくて、乱暴にカーテンを閉めてからソファに座った。



--ピンポーン



ギクリと体が震えた。
こんな時間に・・・・いや、まさか・・・

思わず過った人物の顔に頭を振る。
この場所を知っているはずがないんだ。

自分に言い聞かせながらインターフォンに向かう。
呼び出しの応答ボタンに伸ばす指が震える。
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