短編だったりシリーズっぽかったり

□変態は女装がお好き!?
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「あ〜〜すっげー楽しみー。今日これを見るために昨日から色々準備してたんだ〜」
「へえ?あ、卓巳のおばさんたちにちゃんと泊まるって言っといたのか?」
「とおっぜーん!あ、これ母さんから差し入れ。夕飯の足しにしてくれって」
「お、サンキュ。一応家でも用意してっけど、多いに越したことないよな。おばさんの料理美味いし」
「オレからは菓子の差し入れ〜。やっぱ深夜観戦はポテチだよな!」
「え?そーなん?ピザ頼もうと思ってたんだけど」
「マジで!?ピザも食いたい!」

オレのテンションは上がるばかりだ!
だって、今日は前から楽しみにしていたラグビーの試合を観戦する日だからだ!

うん、まあ、ラグビーのファンになったのはつい最近のにわかだけど。
元々スポーツ観戦は好きだったし。
ルールを知るとラグビーはすげえハマって、毎日ネットで観戦日をチェックしている。


いつもは自分の部屋の小さなテレビで観るんだが、今日は声をかけてもらって変態の部屋に来ていた。
何と、両親が旅行に行ったため、夜中騒いでも問題ないそうだ!
しかも、変態の部屋のテレビはでっかい液晶テレビで、オレはかつてないくらい興奮して食い気味に行くと宣言したのだった。


で、部屋に入って渡すもの渡した後、その部屋の主はガサガサと袋から服を取り出した。


「そ、それは・・・」
「ふふふ、雰囲気を盛り上げようとユニフォームを準備してみました!」
「しかも正規バージョンじゃねえか!どうやって手に入れたんだよ!」
「くははははは。世間にはコネというものがあってだね!」
「くうっ!羨ましい!」
「安心したまえ。オレが自分一人分だけ用意するような薄情者だと思っていたのかね?」
「ま、まさか・・・・へ、変態様!」
「・・・そこは名前で呼べよ」
「うん、何となく!で、で!?」

さらに袋に手を突っ込んだ変態が、一瞬素で落ち込んでいたが、オレに促されてテーレッテレーと効果音を口ずさみながらバッサーと服を取り出した。

「うおおおおおお・・・・・?」

ノリで歓声を上げたけれど、出てきた服を見て首を傾げた。

「何ソレ?」
「チアリーダーの服!」
「・・・誰が着んの?」
「そら、卓巳しかいないだろ。オレがこんなチビッ子サイズ、入るわけねえだろ?」
「むきいいい!自分がちょっと平均よりでかいからってえええ!」
「あははは、ちゃんとサイズ合ってるから。さっそく着ようぜ」
「ま、待て待て待て」

おまえはいいよな?自分はラグビーのユニフォーム着るんだし!
てか、オレもそれを着たい!
何でオレはこんなの差し出されてるの!?

「お、オレの分のユニフォームは?」
「・・・一着しか、用意できなかったんだ」
「う、嘘だー!今、目逸らしたじゃねえか!わざと一着しか用意しなかったんだろ!」
「まあ、そうだけど」
「はっや!認めるのはっや!じゃあ、これ嫌がらせかー!!」
「待て待て。オレがそんな嫌がらせをする男に見えるか?」
「嫌がらせじゃなかったら、変態好奇心しかねえだろうが!」
「うーん・・・まあ、それもあるけど」


あるんじゃん・・・
思わずガックリと肩を落とした。
何だかなあ・・・試合はこれからなのに、何でこんなに疲れちゃってんのかな、オレは・・・


「まあまあ、応援といえばチアリーダーじゃん」
「・・・・は?」
「ユニフォーム着て応援というのもアリだけど、全力で応援っていうなら、専門の格好したほうがいいだろ?特に卓巳はラグビーにドハマりしてんだし」
「え・・そ、なの?・・・あ、でも、それなら学ランで応援団とか」
「うん、それも悩んだんだけど、せっかくならきっちりと刺繍も入ったやつがいいだろ?探したんだけど、間に合わなくてさ」
「あ・・・そんな考えてくれてたんだ」
「当たり前だろ。せっかく卓巳と観戦するんだし、ちゃんとした格好がいいだろ?」
「そっか」

こいつなりに色々考えてくれたんだな。
オレもユニフォームの方が良かったけど、むしろ交換してほしいんだけど、ハニカミながらオレにチア服を差し出したこいつの顔には一片の悪気はない。

「えっと、せっかく用意してくれたんだし・・・」

そしてオレはまんまとチアリーダーの服を受け取ったのだった。
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