短編だったりシリーズっぽかったり

□あの日のキミはもういない
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--まあちゃん、大きくなったらオレのお嫁さんになって。
--たっちゃんのお嫁さん?
--うん。まあちゃんのこと大好きだもん。まあちゃんは?
--マサもたっちゃん大好き。
--じゃあ!
--うん、マサはたっちゃんのお嫁さんになるね。
--約束だよ!
--約束だね。



ガキの頃、無邪気に交わした約束。
あの時のオレ達は本当にピュアだったなあ、と思う。
たっちゃんもまあちゃんも男だってのはこの際たいした問題じゃない。


たっちゃんこと、オレ、達也はそんな小さなころの思い出がグルグル頭の中を駆け巡る中、目の前の光景をただ茫然と眺めていた。


オレのお嫁さんになると言ってくれていたまあちゃん・・・雅美は・・・

・・・小さい頃は天使のように可愛くて文句なく美少女だった雅美は、今じゃ立派に育ったもんだ。
顔立ちこそ綺麗に整っているが、間違っても女には見えない。


そんな雅美が・・・・どこの誰とも知らない小汚いオッサンとラブホに入っていく。


オレの中で、幼いころの天使のようなまあちゃんが微笑んでいる。
お互い思春期を迎えて、高校生になった今はすっかり疎遠になってしまったけれど、それでも何かあれば笑って話すこともある。

すっかりイケメンになった雅美の笑顔が・・・・今はオッサンに向けられている。
何で?どうして?訳が分からなくて・・・なのに、オレの手は勝手に携帯を取り出していて、二人に向けられていた。





そんなことがあった翌日。
雅美が登校してきたところを捕まえようとしたが、生憎チャイムが鳴っても現れなかった。

「くそ・・・アイツ本気で留年するぞ」

高校に入ってから雅美は遅刻が多くなった。
急に不真面目になって心配していたが・・・昨日のことが原因なら・・・やっぱりちゃんと問いたださねえと。

悶々としながら授業を受けていると、雅美が学校に来たのは昼休みが終わってからだった。
・・・マジで留年するぞ、あのバカ!



我慢も限界で、最後の授業が終わると同時に教室を飛び出して雅美を捕獲した。

「・・・あ?何?」

眠そうなダルそうな反応を返す雅美にさらに怒りが湧く。

「うっせえ。いいから来い」

身長は似たようなもん。
体格も似たようなもんだと思っていたけど、掴んだ腕は細くてもしっかりとした筋肉がついていた。
真面目に部活してるわけでもないのに、ムカツク。

雅美は大人しく引っ張られてるけど、面倒くさがって抵抗しないだけかも・・・
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