短編だったりシリーズっぽかったり
□いとしき愚者よ
1ページ/11ページ
「あっ・・・ああっ、だ、め・・・とし、はる・・もう、イク・・・」
「っ・・・」
「あ!俊治、だめぇ、早い、あ、あ、あああああっ」
ビクビクと体を震わせて絶頂を迎えるのに合わせて自分も精を放つ。
細くしなる体を抱きしめれば、快感に耐えきれないように強くしがみつかれた。
「は・・・あ・・・俊治・・・」
快感に蕩けきった顔で脱力する腕を伸ばされる。
強く抱きしめれば嬉しそうに背中に腕を回される。
肩や鎖骨に口づけを落としていると、再び足を絡められる。
今夜もまた、搾り取られそうだ。
「礼司ーシャンプー切れてるー」
「今持っていきます」
先ほどまで散々オレの下で喘いでいた祐樹先輩は、とっくにその色香を消してシャワーを浴びている。
オレは替えのシャンプーを渡すため、風呂場へ向かった。
「ん、サンキュ」
「・・・っす」
シャンプーを手にすると、あっさりと扉を閉める。
オレを見る目に先ほどのような熱はなく、単なる後輩を相手にする態度でしかない。
当然だ。この人が好きなのはオレではない。
祐樹先輩が好きなのは、同じ年の同僚の、新井俊治という人。
中学からずっと片思いをして、結局その想いを告げられないまま10年くらい友人のまま一番近いポジションで笑っている。
オレは南山礼司。
祐樹先輩と俊治先輩の二つ年下の後輩。
早い話がオレは俊治先輩の身代わりで祐樹先輩を抱いている。
それももう7年の関係になる。
「どうぞ」
「サンキュー」
風呂上がりの祐樹先輩に水を渡す。
ごくごくと飲み干す先輩をぼんやりと見つめる。
この人と関係を持ち始めたのは高校生の頃だけど、出会ったのはもっと前からだった。
「これ、明日の会議の資料っす」
「んー悪いな」
水を飲んでいる先輩に会社の封筒を渡す。
別に誤魔化す必要はないと思うけれど、この人は何か口実がないとオレの家にも来れないし、自分の家にも呼べないらしい。
めんどくさい人だ。
だったらセックスを我慢すればいいのに、それもできないそうだ。
馬鹿な人だ。