短編だったりシリーズっぽかったり

□オレが愛した幽霊
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季節は春。
オレ、野中平太は志望していた大学に無事合格し、他県ということもあってこれからは一人暮らしだ。
引っ越しも終了し、細かい片付けや足りないものはおいおい対応しようと考えていた。
意気揚々としていた!
中々いい部屋を安めな値段で借りれたし、大学では早々にサークルでも入って友達に彼女に・・・うふふと、明るい未来に気分は高揚していた。


そう、部屋に幽霊が出るまでは!!!


「のおおおおおおおおまいがああああああっ!!」


何でいきなりこんな怪奇現象!?
なんてツッコム暇もなく、恐ろしい形相の幽霊に襲い掛かられて、オレの意識はあっさりとどっかに行ってしまった。





「果たしてあれは夢だだと軽く捉えるべきか、早々にお祓いに行くべきか・・・」

翌朝、ひっくり返ったままの状態で起きたオレは、状況についていけず、これからどうするべきかと真剣に悩んでいた。
ひとまず、部屋の中は怖かったので時間よりも大分早かったが大学へ来ていた。
入学式的なものもまだだったけど、大学で寝泊まりする研究生や学生が多いのか、オレは特に咎められもせず入ることができた。




「やあ、君はどこか決めた?」
「へ、ええ?」

ハッと気づけばカリキュラムの説明も終わって、自由行動になっていました。
悩み過ぎて気付かなかった・・・


「おーい」

再び声をかけられて隣を見ると、明るい茶髪の結構な男前がひらひらと手を振っていた。

「あ・・オレ?」
「うん、そう。なんかずっとボーっとしていたけど大丈夫?」
「あー・・・ちょっと考え事していて」
「あ、そうなんだ。んで、サークル決めた?」

考え事、なんて引っかかることを言ったにも係わらず、男前はさくっと自分の要件を進める。

「あー・・・なんも決めてない」
「マジで?ここ、可愛い女の子が多いからさっさと行動した方がいいよ」
「マジか!オレ可愛い彼女ほしい!」
「じゃあ、一緒に行く?もう勧誘始まってると思うよ」
「おー!できれば今日新歓コンパ的なものがあるとこがいい!毎日でもいい!」
「えー?元気だね。それとも早く帰りたくないとか?」
「おおおお!そういうこと!君、何君?オレ野中平太!」
「ん?そう言えば名前言ってなかったね、嶋中桔平だよ、よろしく野中」
「よろしく嶋中君!ところでひとつ提案なんだけど!友好を深めるために、今日は君のとこに泊めてくれないかな!?」
「あはは、面白いこと言うね。でもオレ、好みの女の子ならまだしも、男を泊める趣味はないから」
「ぬおおおおおおっ」

一縷の望みが切れたー!
いや、まだコンパ、いや、サークルという希望が!




「・・・なんて、思っていた時期がオレにもありました・・・」
「さすがに初日に新歓するとこはないね」
「うううう、くそう、人の多いとこに入っただけでもヨシとするべきか・・・」

さっそく嶋中君とサークルの物色に動いたのはいいけれど、どこを聞いても今日飲み会をするところはなかった。
とりあえず人数の多いサークルを聞き出して、迷わず入ったところ、嶋中君も一緒に入ってくれた。
うん、別に友情のためじゃないって、可愛い女の子が多そうだよね、って言ってたから。

「でも野中はすごいねえ」
「・・・何がデスか?」
「いやあ、全部のサークルに声かけて、今日は飲みますかって聞いたり、何人いますか?なんて聞いたりして・・・最後の方はちょっとした有名人になってたよ」

あははと軽快に笑う嶋中君に対して、収穫を得られなかったオレはしくしくと落ち込んでいた。

「あちこちで声かかってたし、遊びに行ったりするの楽しそうじゃないか」
「まあ、それはいいんだけどさ・・・」
「野中は人懐っこいね。すっとした地味な顔立ちだからなおさら警戒心持たれずに親しめるんだろうね」
「・・・褒めてんの?」
「褒めてる褒めてる」
「そっか!」

イケメンに褒められれば気分も上向いて、機嫌よくアパートに帰ることにした。





いやあ、いい立地だよなあ。
近くにコンビニも激安スーパーもあるし。
部屋のもんそろえるのはちょっと足伸ばさないといけないけど、まずは食い物の心配が軽減されればなおさら機嫌が上向いた。
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