短編だったりシリーズっぽかったり
□告白記念日(後輩視点)
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「入学式、さぼって校内を歩いてた時に、先輩を見かけたんです。そん時も泣いてて・・・ほっとけないって思ったんです」
そっと涙を拭って、少しでもこの気持ちが届くように真剣に伝える。
先輩はガタガタ震えてた体が止まり、じっとオレを見ていた。
ここで、本能のままに暴走したら水の泡なのはさすがにわかる。
懸命に煩悩を抑えて、自分の気持ちを伝える。
「先輩なのはわかってました。けど、どうしても泣いてる先輩を見て守りたいって思って・・・その時に行動できたらよかったんですけどね・・・運悪くセンコー・・・先生に見つかって」
先輩がぼんやりと、けれど真剣にオレの話を聞いてくれるのが嬉しい。
「あとは、先輩の情報を仕入れまくって、告白するタイミングを伺ってました!」
ギュッと手を握って伝えると、目の前の泣き虫小動物は視線を彷徨わせて、
「僕、あの、でも・・・」
「オレのこと・・・嫌いですか?」
「そ、そんなことない、よ」
「じゃあ!」
「でも・・・その、僕、今まで付き合うとか、したことないから、わかんなくて・・・」
うるうると瞳を潤ませた小動物に、必死で耐えていた我慢のブレーキがぶっ壊れた。
--ぎゅうっ
「ひゃあっ」
思わず暴走して先輩を抱きしめてしまったが、何とかそれ以上は踏みとどまる。
「お試し期間でもいいです。先輩がオレのこと絶対に恋愛対象に見れないって結論が出たら、オレは諦めますから。だから、それまでお試しでいいんで、つきあってください」
今までの自分では考えられないくらい恰好悪いことを言ってるのは承知している。
それでも譲りたくないんだ。
何もせず、何の接点もないまま終わりたくない。
ぎゅうっと力を込めて、再度お願いします、好きですと囁く。
小動物のような小さな体で、それでも大人しくオレの腕の中で納まってくれていて、オレを意識してくれているのか赤い耳が覗いているのがものすごく愛らしい。
先輩、と再度囁くと、そろっと顔を上げてくれた。
「あの・・・」
「はい」
「僕、つまらない、と思うんだけど・・・」
「絶対に思いませんが?」
「あう・・・その・・・」
君がいいなら、お付き合いさせてください。
涙の跡が残る顔で、それでもふわりと笑ってくれた先輩は、オレの心に焼き付いて、何度目になるかわからない恋に落ちてしまった。