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□笑顔をください
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※時間軸は適当です。
今日は珍しく役員全員が早々に集まり、各部の予算申請やらスケジュール等の各種申請やら、試合の結果報告等の事務処理を行っていた。
それぞれ担当する仕事を片付けていたが、無言でいるのが寂しくなったのか、はたまた作業に乗ってきたのか、椎名が鼻歌を超えて歌い始めた。
「・・・ない・・・・香が・・・」
一応抑えようとする気持ちはあるのか、かすかに聞こえる程度の音量。
まあ、椎名は会計だからたくさんの数字と格闘中だろうし、間違えてはいけないから、彼なりの集中方法なのかもしれない。
でも、何の歌だろう。
そろっと、他のメンバーを見てみるが、各自黙々と仕事をしている。
オレも真面目にやろうっと。
「・・誰かに、盗られる、 く〜ら〜いなら、あなたを殺して、いいですか・・・」
聞こえるよ。
はっきり聞こえるよ椎名サン!
気のせいかものすごい視線すら感じるよ!
ダメだからな?
殺すとか、ダメだからな!
歌だってわかってるんだけど、何か怖いよ!?
あと、その歌あれだね!
演歌のとっても有名な歌だね!
オレでも知ってるよ!ビックリしたわ!!
「九十九〜折り 浄〜蓮の滝〜」
そういや・・・歌詞完璧なんだ。
地味にすごいよ。
あと、もう普通に歌ってるよ。
「舞い上がり〜〜!!」
「うるさい!」
「うるせええ!!」
「ミスったじゃねえか!」
歌も佳境に差し掛かったところで、もう我慢できずに怒鳴った注意が皆と重なった。
「鼻歌までなら我慢してやったのに、熱唱するな!」
「・・・あれ・・・どこまで入力したっけ・・・」
「こっち見んな!呪われそうだよ!!」
藤宮と、木下もやっぱり気になってたんだなあ・・・
それでも我慢してたんだから、優しいよなあ。
「あれ?オレ声でてた?」
「「「自覚無し!??」」」
キョトンとした椎名に総ツッコミだよ。
最初はともかく、最後はもう気付いてただろう??
「あ〜ゴメンゴメン。いい加減数字でゲシュタルト崩壊起こしそうでさ〜」
全く悪びれなく謝られても腑に落ちないけど、やっぱりちょっとは同情するから仕方ないなーって雰囲気になる。