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「なんて・・・やめとけばよかった・・・」

立て続けにジェットコースターを梯子しまくった後、見栄もプライドもなく祠堂にしがみついた。
同じだけ乗った祠堂は、全く平気そうなのはムカつくけど、この際捕まり棒として利用してやろう。

「ちょっと休もうか。あそこに座ろ」
「おお・・・もう腰も足もガクガク」
「わあ、朝比奈えっろーい」
「何でだよ!」

園内のベンチに座ってようやく一息つけたけど、祠堂は抜け目なく人の揚げ足取りやがって。
ムカッと睨み付けると、祠堂が笑って立ち上がった。

「飲み物買ってくるよ」

逃げるように売店に向かった祠堂を見送った。
相変わらず、人をおちょくりやがって・・・


などとボンヤリ祠堂に視線を合わせていると、売店前で女の子2人組に捕まった。
それをすげなく交わして飲み物を注文し、売店のお姉さんに声をかけられたのを笑顔でかわした。
戻ってくる最中も次から次へと同年代くらいの女の子から、年上のお姉さんに群がられていた。

いやあ、モテモテですなあ・・・

なんて呑気なことを思えるはずもなく!

オレはベンチから立ち上がって祠堂の元へ一直線に向かった。


「あ、朝比・・「リンタロー!」


笑顔で走ってくるオレに気付いた祠堂が声を上げる・・・のを遮るように名前を呼んだ。
女の子たちに差を見せつけるようにわざと下の名前で呼んで。
・・・ははは、オレって心せっま。嫉妬ぶっか!
祠堂が少しだけ目を丸くしているのも、いきなり乱入してきたオレを訝しげに見る女の子たちも気にすることなく、両手にジュースを持ってがら空きになっている体に抱き付いた。

「あ・・あさ・・・」
「リンタローおっそいんだよ」
「え?あ、ゴメン」
「あ、飲み物?サンキュー。何買ったの?」
「えっと、コーラ」
「おお、いいねえ」

ベタベタとくっつくオレに面食らう祠堂がちょっと新鮮。
祠堂からコーラを受け取って空いた腕に絡みつくと、ようやく祠堂がいつもの調子に戻った。
オレを腕に絡みつかせたまま、顔を近づけて意味ありげな距離で妖しく笑った。

「よかった。少し休んだらまた乗ろうか。何がいい?」
「そうだなあ。ジェットコースターは大体乗ったし・・・次は二人っきりになれるのがいいな」

女の子たちの視線に殺されそうになりながら、それでも見せつけるかのように挑発的に言うと、祠堂はグイッとオレの肩に手を回してさらに密着した。
きゃ、と小さな悲鳴が上がるのを聞きながら、女の子の輪を抜け出した。

「じゃあ、観覧車に乗る?でもあれはラストに取っておきたいから・・・んーお化け屋敷とか」
「うげ、それはヤダ」
「あれ?怖い?」
「うん。ムリムリ」

挑発するように言われても無理なものは無理。
あっさり頷くオレに祠堂は楽しそうに笑う。
ほとんど顔がくっつきそうなほど寄せて、

「こうやってくっついてれば怖くないよ。見るのが怖かったら目を瞑っててもいいよ」
「それは入る意味があるのか?」
「ん?ユウちゃんのビビり顔が堪能できて、オレは楽しいけど?」
「うわ、いじめっ子だ」
「だってイジメたくなるほど可愛いんだもん。ユウちゃんのせいじゃない?」
「何でオレのせいだ」

べったべたにくっついて歩くオレ達の後ろから、聞こえるくらいのボリュームで分かりやすくののしられた。
主にオレが。てか、オレが。
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