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「うひあっ?」

さらに掌をぺろりと舐められて間抜けな悲鳴が出た。

「やめんかっ」


--スパン


「痛いー朝比奈の乱暴者ー可愛いーいいじゃんかそのくらいー」
「言いたい放題だな。さっさと部屋行くぞ」
「う・・・うん・・・」
「何で顔赤らめるんだよ・・・」

いつもの調子で絡まれてオレも軽く返したが、祠堂の手を引いて部屋に戻ろうとすると何だか嫌に照れた反応をする祠堂・・・
イケメンだから許されるけど、デカイ男がモジモジすんな。




「さっきも一緒に寝たし、夜も一緒でいいよな?明日は何時に起きるか・・・」

携帯を弄っていると、蒼一たちからラインが来ていることに気が付いた。
全く気付かなかったなあ、返事しておかないと。
あれこれ考えながら明日の予定を決めていると、祠堂がそわそわと立ち上がった。

「ええと、ちょっとトイレ行ってきます・・・」
「ん?うん」

さっきも行ったはずなのに・・・やっぱり腹の調子でも悪いのかな。
祠堂がいない間に明日の用意でもしておこうかな。
祠堂の制服は明日には乾いてるだろうし、カバンの中は・・・

明日の授業を確認しながらカバンの中身をそろえようとした・・・が、そのカバンがない。

「あれ・・・?・・・・・あ・・・・そ、うだ・・・オレ、昨日・・・」

昨日風紀委員室から直行で家に帰ったから、カバンは風紀室だ。
その一連を思い出して、ぶるりと体が震えた。

「どう、しよう・・・こんなの、何でもないって言いたいのに。明日、こそ、学校行かないと・・・」

ガタガタと震えながら、果たしてこんな状態で明日学校に行けるのか不安だった。
オレがこんな状態じゃ、千晶先輩と向き合うことすら難しい。
いつものように千晶先輩と話して、こんなこと、じゃれ合いの延長だって祠堂にわかってもらわないと祠堂も傷つけたままになってしまう。

あんなの、千晶先輩のいつものタチの悪い冗談なんだ。
そう片付けないとオレはもう二度と千晶先輩と話せなくなる。
そうしたらきっと先輩は自分をものすごく責める。
オレがどんな馬鹿なことをしても、どんな結論にたどり着いても先輩は見守ってくれて受け入れてくれてたのに・・・それがどんな感情によるものか、ちゃんとわかっていたはずなのに。

オレは・・・いつの間にか千晶先輩に甘えまくって、その優しさを当たり前だと思ってしまっていた。

今度はオレが先輩の出した答えを受け入れる番だ。
絶対に千晶先輩は答えを出してくれる。
オレはそれを当たり前のように受け止めたい。
今までの先輩のように、受け入れてさりげなく支えられるようになりたい。
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