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□名もなき実行委員
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--ガチャ
再び生徒会室の扉が開く。
今度は生徒会長様だ。
一気に室内の空気が変わる。
緊張と共に、手を止めてしまっていた作業を再開する。
お三方、早くお仕事しないと、会長様に怒られません??
会長様は険しい表情のまま三人に近づいていく。
「おかえりなさい、皇士先輩。これ、校正終わりましたので、印刷かけてきますね」
あの分厚い冊子をいつの間に読み終えていたんだろう。
会長様は空気を一変させて薄ら笑みを浮かべると、副会長の頭を撫でている。
「そうか、ミスは無かったか?」
「はい。何度か確認しましたので、大丈夫だと思います」
会話上は普通の会長と副会長の内容に聞こえる。
けれど、ずーっと副会長の頭を笑顔で撫でている光景を見ると、何か違う感じにも見えて仕方が無い。
今年度の生徒会って、こんなにスキンシップが濃いのか・・・
うらやましいような、恥ずかしいような・・・
・・・てか、あの人達、同じ室内にオレ達実行委員がいることに気づいてないだろう。
そろ、と委員のメンバーを見ると、皆必死で見ないフリをしている。
・・・・・オレも見ないフリしておけばよかったな。
何だか見てはいけないものをみてしまった、とため息をつきつつ作業の手を進め、副会長に資料の印刷を依頼されるまで没頭した。
後日談。
あれだけスキンシップの激しい方達だから、普段も結構行っているのかと思っていたのだが。
休み時間等で見かける彼らの傍には、副会長のように近づく人は誰一人いない。
彼らから自主的に近づいたりもしない。
当然、顔がくっつきそうなほどの距離で話す事も無い。
ボディタッチもなし。
ふむ。やっぱあれはあのメンバーだけで行われてるのかもな。
ふ、と副会長の姿を見かけた。
クラスメートと思われる人に、極々普通に肩を組まれたり、親しげに話しているのを見る。
副会長はそういうのアリ派か・・・
いや、待てよ?
生徒会室の光景を思い出す。
あの人、メチャクチャ無防備だったよな。
パーソナルスペースがメッチャ狭いんだろうか?
ああいうスキンシップって、誤解されやすいんじゃなかろうか?
第三者のオレでも一瞬会計様とつきあってるのかと誤解しちゃったくらいだし。
・・・・・例えばさ、スキンシップしてくる相手にも誤解って、されないんだろうか?
あれだけ無防備に触られて、嫌がるどころか笑顔を向けられたら、好意を持っちゃうんじゃなかろうか・・・?
あ、あははは、いやいや、だって、会長様も会計様も書記様もあんだけイケメンなんだよ?
あのくらいのスキンシップは慣れてるよな?
・・・普通に、仲がいいだけ、なんだよな??
これは詮索していってもいいことなんだろうか、それともタブーなんだろうか。
オレの実行委員としての活動はあと数回。
このまま何も見ないフリをして無難に過ごせばいいのか。
それとも好奇心のまま詮索してもいいものか。
・・・・どうしようかと、真面目に悩んでしまう今日この頃。