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□後編
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--ザプ


あれからようやく。
落ち着きを取り戻した小磯が、僕を再度洗って浴槽に身を沈めた。
じわじわとしみこむ湯の暖かさに、視線は虚ろに湯気を彷徨う。


--ジャプン


後ろから抱きしめている小磯が僕の腕を持ち上げる。
僕の頼りない腕は、拘束の痕をはっきりと残し、すれて赤くなっている。
その痕を小磯は舌を這わせ、唇を辿らせる。
ちりっとした鈍い感覚を次々と与える。

「お風呂からあがったら、腕の手当てをしましょうね・・・だから、たくさん痕を残させてくださいね」

チュッチュとリップ音を立てチューっと吸い付かれると、小磯の言う通り痕が残っている。
自分の体なのに体の感覚が一切なくて、どうやったところで小磯を止めることができないことを理解する。
ぐったりと小磯に頭を預ければ、嬉しそうに耳や蟀谷に唇を寄せられた。
疲労がピークをとっくに超えていて、自分の体をあっさりと小磯に明け渡す。

「坊ちゃま」

湯の中で小磯がさらに僕を抱きしめる。
僕の尻に小磯の硬い陰茎が当たって、絶望に身をよじらせたかったがピクリとも動かない。
小磯が欲望のまま僕を犯し続けてもおかしくないほど、小磯の声は欲情に濡れている。
また貫かれたらどうしようと、唯一流せる涙をこぼしながら恐怖に慄いていた。

「坊ちゃまを・・・壊したいわけじゃないのに・・・」

小磯の声が葛藤している。
欲望のまま暴走したい本能と、僕を気遣おうとする理性がせめぎ合っている。
僕には小磯の出した結論に従うしかないから、静かに涙をこぼし続けた。





かろうじて理性が勝利した小磯は、風呂場ではそれ以上何もせず、バスタオルで僕を包むとリビングへと移動する。
ソファに座ると、小磯が甲斐甲斐しく頭を乾かしていく。
先ほどまでの嵐のような荒々しい雄の本能を剥き出しにした小磯はどこにもなく、いつもの穏やかで優しい家政夫の僕の良く知る小磯だ。
それでも僕の怯えはちっとも治まらないのだけれど。

僕の体はすっかり作り変えられて、小磯から与えられる快感を受け入れられるようになっている。
こんな自分を想像したことがなくて、小磯だけじゃなくて自分すらも怖い。

「坊ちゃま、お水です。飲めますか?」

小磯がよく冷えた水を差しだす。
僕の体調をよくわかっている小磯は、コップに入った水にストローを差してある。
手が上がらない僕は、口元に差し出されたストローを口に含んでコクコクと飲んだ。
喘ぎ過ぎた喉に水が沁み込んで、あっという間にコップの水を飲み干すと、口元についた水滴を小磯が指で拭い、そのままぺろりと舐めた。
小磯の舌に、ぞくりと背中が震える。
あの舌に何度も何度も狂わされたのだと、つい凝視してしまう。


「坊ちゃま・・・」

僕の視線に気づいた小磯が、困ったように首を傾げた。

「少し休憩させないといけないと思っているのに、坊ちゃまにそんな目で見られたらまた欲しくなってしまいますよ」

僕はバスタオルに包まれたままだけど、小磯は全裸だ。
均整の取れた男らしい体、その中心の陰茎がまた立ち上がっている。
あんなに何度も射精しているのに、小磯はまだ硬くなって僕をギラギラと見つめている。
小磯は疲れてないのだろうか?
逃避したくて、場違いな事を考えた。

僕を包んでいたバスタオルが落とされる。
またしてもあの行為が始まってしまうのかと涙を浮かべて小磯を見つめる。


「・・・腕を、手当てしましょうね」
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