ツキウタ。短編
□鳥籠A(春葵)
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今日は一日中仕事だった
朝から夕方まで
それはまたまだ新人な俺にはとても幸せなことだ
仕事だって好きだから、出来るところまで精一杯頑張りたい
でも、たまには休みたいし、したくない仕事もある、同じユニットの仲間に、相方に、弟に、恋人に仕事に行って欲しくないと思うこともある
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仕事が終わったけど、俺が向かった先は寮ではなくテレビ局
そこでは俺より帰りが遅くなる予定の相方と恋人がいた
始と葵君
この2人の組み合わせで撮影は珍しい
大体、始と俺、新と葵君、恋と駆になるからね
でも、接点は意外と少なくない
グラビの中で料理スキルが高かったり、動物に好かれやすかったり、王様と王子様で括られたり、他にも色々あるけれど、2人は多くのことに関して秀でているのがその理由だ
今回はその中でも料理でプロセラの夜もいて3人で料理している
俺はそれを見学している
みんなそれぞれ楽しそうだ
何でも出来る始は誰かに教わったりすり、小さな頼まれごとをされたことがあまりない
だから料理のコツや人に食べてもらうことの工夫を教えて貰って頼まれることが新鮮で嬉しいようだ
葵君はプロセラでは夜と仲がいいし、始のことだって尊敬してて、この2人と一緒に料理することが楽しみなのは昨日聞いてた
夜はもともと誰かと料理がするのが好きで覚えたって言ってて、それで行くと今ほど楽しい瞬間もないのだろう
葵君はその2人に好意を抱いていても、それが友情や敬意であるのは知っているし、他の2人が葵君に向けるものもそうではないと分かった上で見せ合う笑顔に心に黒いものが渦巻く
笑顔でなければ仕事にならないわけだけど
それからしばらくして撮影は無事に終わった
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「お疲れ様」
3人に声をかけると始は呆れたような顔を、葵君は笑顔で返してくれて、夜も少し驚きつつ返してくれた
「葵さんも近くで撮影だったんですか?」
「うん、それで3人がここで撮影するって聞いてたからちょっと見てみようかなあ、と思って」
始はそれの顔を呆れたまま見つめたと思ったら夜に視線をやる
「昨日、白田の真似なのかわからないが黒田が部屋にあったバンダナを首に巻きたがってな
悪いが夜、アイツに似合いそうなのを選ぶのを一緒に選んでくれないか?」
夜はきょとんとした、不思議な表情をする
こういうのは始の柄じゃない、得意不得意でも陽や恋を思い浮かべたのだろう
「分かりました、きっと喜びますよ」
それでも当たり前のように返事をする夜も俺達を二人きりにしようとしてくれる始も優しい
俺達はすぐに分かれて、目的地に向かった