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□プロローグ 緑髪の少女
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 満員電車の中は、いつもと同じような服を着たサラリーマンが、汗を拭っていた。
 真っ黒な服ばかりが並ぶなか、腰まで伸びた滑らかな緑髪が、電車の揺れに合わせてしなやかに揺れていた。
 その少女の手足は細長く、雪のように透き通った滑らかな肢体、しかも傷ひとつない。スタイルもよく、誰もが振り向くくらいに顔が整っている。
 そんな少女に、チンピラが近づく。
「おい」
 少女は、見上げてチンピラの目をじっと見つめた。
「何でしょうか」
 少女の優しげな高めの声が車内に響く。
「俺らのチームのリーダー、病院送りにしたんだってな。お前みたいな細いやつに倒されるなんて、信じられんが……。」
 その内容は、あまりにも衝撃的だった。
「すみませんが、どのような外見でしたか?記憶に無いのです。」
「赤い髪でツンツン頭で、顔にでけぇ傷跡がある。」
 少女は、暫く顎に手を当てて考えた。すると、手を叩く仕草を見せた。
「ああ、あの方ですね!あまりにも弱すぎて、記憶から消されてました!」
 それは意外過ぎる返答だった。チンピラは目を見開いた。
 暫くすると、停車のアナウンスが流れ、少女は席を立った。サラリーマンたちを避け、下車した。
 それを追うようにして、チンピラたちも下車した。
「待てッ!」
 低い声が、ホームに響く。
「…まだ何かご用が?」
 少女は振り向くとチンピラに向かっていった。 
 仇を取りに来たのだろう、察したのか少女は構えをとった。 
 チンピラは笑みを浮かべて少女にいきなり拳をぶつけた。 
 誰もが入ったと思った。…が…
「…軽いですね…」
 少女はなんと、拳の弾道をいとも簡単に手で受け止めていた。
 拳をぎゅっと握ると少女はチンピラの腕を捻り、背中合わせになった次の瞬間…ーー
 チンピラは宙を舞い、背中から落下して気絶してしまった。
 少女は鞄から湿布を出すと、チンピラの胸の上にそっと置いてやった。そして足早に学校へ向かっていった。
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