Chasing! ブック

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『とりあえず意識させてみろよ。何か変わるかもしれないだろ?』


新開のヤロウに言われた時は、んな馬鹿な。と正直思っていた。

一年から三年まで同じクラス、しかも出席番号も毎年前後の新井空。アイツはクソが付く鈍ちゃんだ。

オレが何でずっと横キープしてんのかなんて、アイツは一度も考えたこたァない事も知ってた。

まァ、オレの横で飽きないから離れて行かねェんだろとか、気が付けばアイツはオレが何か言う前にわかりやがるとか、そんな生温い関係でイイとさえ思ってた。

だが、いつしかオレん中で独占欲っつーのが生まれやがった。

初めはオモチャを取られたくねェガキみてーな感情かと思ったが、違うとわかったのは二年に上がった時。

また前後の席になっちゃったね。なんてはしゃぐアイツを見て、心底同じクラスで良かったと思う自分に、ようやく好きなんだと気が付いた。

それからはアイツに寄り付く男共にガン飛ばしたり、行事の時には同じグループに無理矢理なったり、我ながらバカな事しながらアイツが離れないよォに必死に動いた。






けど本人は全く気付きゃしねェ。

一回アイツの友達に、女ってそんなモンなのか聞いたら空は特別鈍いだけって言われて納得した。

けどよォ……、

コロン。

…席替えしても結局横になった空ちゃんの椅子近くにわざと消しゴムを落としてみれば、

「………はい、」

顔真っ赤にして消しゴム取って渡してくる空ちゃんに、柄にも無く喜んじまうオレ。そんなコイツを見てやっぱオレの行動が間違ってなかったっつー確信が付いた。

『一度意識させてしまえば、靖友。空ちゃんなら真剣におめさんの事を見てくれるさ』

こんな事も言ってた新開の言葉は見事的中だァ。


それに関しては多少癪な気もするが、消しゴムを受け取る時に空ちゃんの手を一瞬握れば、湯気が出でンじゃねーかってくらいさらに顔赤くする空ちゃんに、そんなん忘れて思わず吹き出した。

「な、何笑ってんのよ!」

授業中だから小声で話す空ちゃん。それもまたどォしよーもなく可愛く思えて、

「だってよォ、空ちゃんイチイチ可愛いンだヨ」

素直に出た言葉は空ちゃんにとっては物凄い威力を発揮したみてェで、






「〜〜〜〜ッ!!」

言い返せねェと思ったのか、机に突っ伏して腕の中に顔を埋めた。でも髪、耳にかけてるから真っ赤ンなってンの丸見えだけどネ。

ロード一筋だったオレが、まさかこんなクセェ台詞吐くなんざ思ってもみなかったが、これはこれで 空ちゃんの色んな表情が見れて楽しくなる。

嫌いな授業も空ちゃんが近くにいるだけで違ったよォに見えンだから、恋愛っつーのも悪くねェ。

さァ、空ちゃんを捕らえるまで何してやろっかナ―――。


(くそ、靖友の奴絶対楽しんでる!)

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