ディバゲ

□苦労人は休日も苦労する
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※若干キャラ崩壊気味(?)です(主にダンテ)

ダンテは新しい手袋を調達しに常界に来ていた。雪は溶け、ぬるい風は思わず眠ってしまいそうな程心地よかった。
いつもより軽いラフな格好が落ち着かない。軍帽ももちろん被る訳にはいかず、仕方なくマリンキャップを被っていた。
久しぶりだ。一人で街へと出かける事、そもそも軍服を脱いだのもいつ以来だろうか。思い出すだけでも気が遠くなる。
ただ広く、所々に大きな神殿や豪邸がある程度の閑散とした神界とは大きく違う、狭く人が密集した息苦しいだけの場所。
ここに来ることも然程少なくはないものの何故か慣れる気がしなかった。
店が増えると人も増えた。大混雑とまではいかないもののここ最近一度に会う人、いや神の数が少なかったせいもあってか目眩がしてしまいそうだった。
そんな中、何処か見覚えのある後ろ姿を捉えた。
茶髪の中目立つ真っ黒な髪、がっしりとした身体つきは背中でも充分伝わる。何より自分と同じ何かを感じた。きっと同種族ならではの直感なのかもしれない。
距離はそこそこあるもののダンテはほぼ確信だと思った。
おそらく、スルトだと。
ふと、誰かが彼と話している事に気づく。隣にいた女だ。銀髪な点では他とは異なっていたが、見るからには普通の女の様に見えた。
どこか一般人とは違う雰囲気にもしや彼女も神なのかもしれない。
無意識なのか二人が気になるのか目的のお店とは反対側にあったデパートに入った二人を気づいたら追っていた。

見失いそうで見失わない位の距離を空けて歩く。いかに普通に見える様振る舞うか夢中になっている自分にようやく彼は気づいた。
こんな事をしている場合じゃない。ましてや、バレればタダでは済まない。悪趣味を持っているとでも誤解されるなんて事になったらたまったもんじゃない。
引き換えそうかと思ったその瞬間、ふとスルトと目が合う。
今まででも経験した事の無い緊張感が襲う。別に睨まれてはいなかった。
むしろダンテと目が合うと、スルトは無表情ながらも不思議そうに軽く首を傾げていた。
「スルトー、ちょっとあのお店見てくるね」
「あぁ」
女がスルトの元を離れると硬直したままのダンテの元へスルトが向かう。
一歩、また一歩と近づく度にダンテは混乱状態に陥る。自分が情けなく感じるものの打開策が今の彼には見つからなかった。
「珍しいな。お前も来てたのか」
「あ、あぁ…」
きっと彼は自分が追って此処まで来たなんて想像してないだろう。感情が読み取れない彼の眼差しが純粋に向けられている事に身の毛がよだつ。
もうこのまま彼と一緒に買い物をしてしまえばいいのだろうか?そう思うものの、先程までの罪悪感に苦しまれ続けなければならないだろう。
「何を買う予定なんだ?」
「手袋だ。この間擦れてしまってね」
そうなのかと納得した彼の表情から疑問が消える。
ここはやはり、さっさと去るべきだ。このまま帰ればきっと疑われる事もない。
「スルトー、見て見て!…って、あら?」
白くシンプルな紙袋を抱えた女が彼らの元に来る。
なんてタイミングだ。
「この人誰?」
「ダンテだ」
「へー、スルトのお友達?私、オーディン。よろしくね!」
さぁ、どうしたものか。今帰れば逆に変な印象を与えかねないかもしれない。…俺がただ考え過ぎなだけかもしれないが。
こちらこそよろしく、と言うと差し出された手を握る。
一瞬スルトに軽く睨まれた気がするのは気のせいだ。あぁ、気のせいだ。
「にしてもスルトのお友達とか珍しいねー。私初めて見たかも!」
「そんなに珍しいか?」
「もちろん!」
ダンテはふっとある事が脳裏に浮かんだ。…もしや、二人は付き合っているのでは、と。
スルトの口調がどこか優しい気がしたのだ。これは、気のせいじゃない。

「もしかして、ふたr…」
走っていた子供がダンテにぶつかった瞬間、彼は後悔した。この時彼の周囲への警戒心はほぼ無かった。自分の考えだけで精一杯だったのだ。もし、気をつけていたら、普段の彼だったらこんな事は起きなかったのだ。
バランスの崩れたダンテは思わず転倒しそうになるものの手で何かを掴み踏ん張ったのであった。その掴んだものがいけなかった。オーディンの…彼女の胸であった。
「す、すまない!」
思考が物事に追いつくと同時に即座に離しては、謝罪する。
子供はいつの間にか消え、場には重い空気だけが残った。
今日は厄日だ。大半が自業自得だったが、そう言わざるを得ない。
彼女は気まずそうに視線を逸らしながらも、あ、大丈夫!と言うものの、スルトに至っては消し炭にされそうだ。

今選ぶべき選択肢は一つ。らしくないが、逃げるだ。
「そろそろ目的果たさなければいけないから、すまないが、行かせてもらう」
最後多少早口になりつつも、一目散に駆け足で去る。さようならーとの声と視線が背中に刺さる。目的はこれからだというのにどっと疲れた気がした。
次からはこんな事は絶対にしないと誓い、暫くの間ダンテの警戒心は強かったらしい。

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当初はダンオーになる予定が描いている内にそんな要素が綺麗さっぱり無くなったダンテとスルオーのお話でした。
日替わりでも苦労しているっぽかったので他の場面でも彼は苦労していそうです。

2015.04.05

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