ディバゲ

□兄弟
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気がついた頃にはすでに僕らは一緒に居た。
そんな事に何の疑問も持たず、いくつの日を数えただろう。
きっといままで過ごしてきた時間は一緒に居なかった時間から数えた方が早いくらいだろう。

「ねぇ」
だから今更言われるとは思わなかったんだ。誰にも触れられたくない、知りたくない正体を。
「あたし達って本当に兄弟なのかな」
眉はいつもより力が無く、笑顔も貼ったみたいで彼女の眩しいほどの明るさがそこには無かった。
若干引きつった口元から伺えるのは不安。今にも押し潰されてしまいそうなくらいの不安だった。
「今更…なんで?」
普通を装うのもやっとだ。
唾を飲む音がやけにうるさく感じた。
空白の時間がこんなにも長く感じるなんて。
「なんか急に不安になっちゃって…なんてね」
あどけない笑顔の裏、君はどんな顔をしているんだい。
あぁ、きっと本当は泣きたいのかな。どうせ、僕は無力なんだな、と嘲笑する。
「まぁ、もし兄弟じゃなかったとしても、あたし達はあたし達だもんね!」
常界から舞い上がる風が髪飾りを髪飾りを揺らす。
さらさらとした彼女の髪が短いカーテンの様に広がる姿はこの上なく綺麗で儚かった。

「そ、そんな悲しい事言わないでよ…!」
思わず伸びた両手に掴んだ僕と同じくらいの小さな手。彼女の目も離さない様、しっかり見つめていた。
澄んだ緑に映る僕の姿はいつもより真剣な筈だった。
「ふふ…あははは!なにファズったらそんな顔してんのよ。冗談よ冗談よ」
「酷い!?僕はこれでも真面目に…」
真面目だっただけに茶化されては、少し頭にきそうだったものの、まぁ、笑ってくれるならそれでもいいかな、なんて思ってしまった。
「兄弟に決まっているでしょ!それ以外、あたしは信じられないわ」

出会いはもう思い出せない。そもそも出会いなど無かったかもしれない。もしくは、忘れているだけなのかもしれない。
そんな事は別にどうでも良かった。僕らは今日も『兄弟』という繋がりをただ信じていたかったんだ。

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兄弟設定のファズクラでした。
調聖者の中で二人が兄弟みたいに似ているなと思いました。
ディバゲの神様は自身の誕生を知っているのでしょうか…?

2015.02.28

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