ディバゲ

□悪戯
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内容はロキが独自で調査したという三人の逃亡者についてだった。確信は持てていない模様だったが、心当たりはいくつかあったらしい。ふと、ある事を思い出す。前に聞いた他の三人、及び二人の王も今目の前にいるヘルヴォルと同じ様な神に襲撃されていたという事に。二人はそれにより、王となった事も聞いていた。
「なぁ、お前って仲間とか居んのか?」
「居るけど、なんで?」
「……いや、なんでもない」
彼相当の人物、否、神が居るのかと思うと気が遠くなりそうだった。これ程濃い奴があと何人居るのだろうか。
「気になるの?」
急に顔を目前にまで近づけられては、一瞬戸惑いつつも距離をとる。捕まえる最高のチャンスかもしれなかった事に今の彼の思考は辿り着けなかった。
「な、なんだよ……急に」
「ん?何か可笑しい事でもしたっけ?」
「べ、別に……」
一体なんなんだこの展開は……!も心の中で突っ込むものの誰にも届く事は無かった。咳払いをするもののこの空気をどうすればいいのかと悩んで居ると、
「あ、そうだ、僕やってみたい事あったんだよね」
無邪気な笑顔に恐怖と不信感を抱く。特に頷くことも無く次の言葉に息を飲む。
「ちゅーとか言うやつ?よくシグルズがスルトに言ってるんだけれども、僕もやってみたいなぁって。ヘグニに振ってみたら断られちゃっ「はぁ!?ふざけんなよ、誰がするかよ!」…けち」
頬を膨らませて拗ねる姿に可愛らしさはあるものの、相手は男だ。
ただでさえ初恋の人が同性だった衝撃も耐え難かったというのに、キスなんてもっと耐えられるものか。
さっさと帰れよと追い打ちをかけるように言葉を投げては、また資料と向き合う。が、盗ろうと紙を引っ張られる。
薄々感づいていた為、紙を離すことは無くくしゃりと折れてしまった。おいと顔をあげると声が出る前に鼻がぶつかる。
「いたぁ…」
勢い良くぶつかったせいか距離を置いては蹲っていた。
「こっちだって痛いっつーの」
流石に可哀想にも思えた上、もし鼻血まで出されたら、そしてここで誰かがやってきたら誤解されるのは確実だ。
ポケットティッシュをほうり投げると、顔を上げる。もう帰ると舌を軽く出しては風のように去ってしまった。
あまりの呆気なさに気をとられてしまうくらいだった。
嵐の過ぎ去った後の静かな部屋に重い溜息を一つ吐いては銀杏を持ち帰っていた事に気づく。嫌いと言ったくせに持ち帰るなんて訳の分からない奴だとつくづく思うのであった。

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2015.2.8
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