ディバゲ

□光景
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「あー、暇だわ」
退屈そうに眺めていたのは天界との聖戦に向けて慌ただしくなっていた魔界だった。魔界の中でも最果ての地で濃い影を作る不夜城を一瞥すると、つまらなさそうに頬杖をつく。

魔界に君臨する女王はそこで魔界を一望していた。
まるで仮面ではないかと疑う位、ぴくりとも動かない表情は顔により一層深い影がさす。どこか寂しげな背中はヘグニにとってうっとおしかった。

固く閉じられた唇はそう簡単に言葉を紡がなかった。彼女が声を発するのは仕事の時くらいだけで、一日をほぼ無言で過ごす時もあった。
だからこそ、ヘグニは彼女を襲撃したあの日が忘れられなかった。
『嫌っ……嘘よ!こんなの夢でしょ……』
とても今の女王として立ち振る舞う彼女からはかけ離れた絶望に満ちた悲鳴、表情、様子が脳裏に焼き付いていた。乱れた髪が酷く美しくて堪らなかったあの時。涙と血が混ざる瞬間が一番人の生で輝いてると彼女は信じて疑わなかった。

「これだからあいつらから性格が悪いなんて言われるんだろうけどね」
たいしてシグルズとかも私と変わらないくせに、と零す。
散々絶望へと突き落としたくせに口を開けば罪に濡れた男の名か炎神の名ばかり。
だから、私のこの気持ちも決して可笑しい訳ではないの、と誤魔化していた。
あぁ、早くまたその顔を絶望で歪ませてしまいたい。
ストールも破いてしまえば良かったなんて。
闇を見つめる少女をより一層闇に深めていくのであった。

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