ディバゲ

□なんとなく
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「分からない事があるんだよね」
端緒となったのは、一片の言葉だった。声からも滲み出る彼に相応しくない様子に返事もせずに紡がれるのを待つ。沈黙が長引く程歯痒くなる。

「ねぇ、僕の話聞いてる?」
「聞いてるよ。何が分からないのさ」
「僕たちって神じゃん。つまり僕が分からない事って神にも分からない事になるんだよね。これって怖いと思わない?」
なんだそんな事か、と思わず口にしそうになるも、逸らしてたはずの目が合う。いつもの揶揄した言葉を発する本人とは別人の様な真摯な目に思わず逡巡する。

「そう思わないことも無いけれど……で、その分からない事って?」
「んー……何と無くだけれどもこれを君に言っちゃいけない気がするんだよね。」
嵌められた。どうやら彼は僕を苦悶させたいが為にこの話題を振ったに違いない。
「僕に言っちゃいけない事をなんで僕に振るのかな」
「それは分からないなぁー……僕の気分?」
「聞き返されても困るんだけど」
ははっと乾いた笑いは相変わらず俯瞰されているようで顰蹙だった。そもそもいつもの含み笑いでさえ気に食わないのだ。神という同じ種族、土台に立っていて、その上僅かな差はあるけれども凌駕していると断言できる点が見当たらないのに嫌悪していた。


「僕、もう帰る」
「え、帰っちゃうの」
掴まれた手に茫然自失とする。普段は触れる事などしない。彼を知悉している訳ではないが、いつもの狡猾な態度は何処に彷徨ったのか。
「珍しいね。君が引き止めるなんて。で、今度は何だって言うのさ」
「んー……これも何と無くって僕が答えたら君はなんて返す?」
「帰る」
「だよね、知ってる」
何を躊躇しているのか、何を曖昧にしているのか。いつもの君なら真情を吐露することなんて容易い筈なのに。


「やっぱり、何でもないや。帰っていいよ」
手を離すとじゃあね、と手を振る。執拗さからの突然の解放はそれもそれで複雑であった。
「何か今日の君とことん変じゃない?」
「まぁ、そうかもしれないね。こういう日だってあるでしょ?」
「そうなの?」
「そうだよ、そう。ほら早く帰りなよ」
手のひらを返された挙句の果てに急かされると流石に呆れた。何を隠そうとしているだかまるでわからなかったが、それもどうでもいい。
「じゃあね」
短くそう言い残すと、振り返らずに歩み始めた。相変わらず変なんだから。そんな彼にこんなに心を動かされている僕も変なのかもしれない。もしもそれがただの詭弁に過ぎないならば。いや、そんなの事を考えるのはやめにしよう。理解し難いことに苦汁嘗めながらも一日は過ぎてしまうのであった。

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勉強用として書いたヘルファズ、もしくはファズヘルのお話でした。どっちなのか自分で書いていても分からなくなりました(汗)CPの定義(?)が未だによく分かりません。

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