ディバゲ

□憧れ
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それは何の変哲もない日の事。
ロジンはどこを探しても見当たらない西魔王の姿にただ一人慌てていた。部屋は綺麗に整えられていてつい先程まで居た様には見えない。おそらく出掛けてからそれなりに時間は経っているだろう。
なんで。出掛ける時はいつも言うのに、何で居ないの。心の内に留めていた筈の言葉は溢れ、口に出ていたのかすれ違う人々の瞳を集める。はっとその事に気づくとみるみる顔が紅潮するのが嫌でも分かる。
「やだ、私声に出しちゃ……」
言い切る前に一目散にその場から逃げる。そもそもこんな所に自分が居てもいいのかわからないロジンに一人で教団に居るのはとても肩身が狭かった。


もう今日は部屋にでも引きこもろうかと引き返そうとすると、思わずぶつかる柔らかい感触。
「きゃっ……!あ、す、すみません!」
「あら、こちらこそよく見てなかったわ……って、ロジンじゃないの」
必死に謝るロジンにタシンが微笑む。ロジンもタシンだと分かると嬉し気に頬を緩ませる。
「お久しぶりね。どう?慣れた?」
「いえ、全然……」
ふふっと笑みを浮かべる彼女にロジンは思わず見惚れる。長く妖艶な睫毛に筋の通った鼻、スタイルも良ければ、落ち着きのある素振りに女性として彼女に憧憬の念を抱いていたのだ。


「まぁ、ここの空気は濃すぎるかもしれないわね。ところで、珍しいわね。西魔王はどうしたのかしら?」
「あ、彼なら多分出掛けているのかと……」
「あら、そうなの。にしても、こんなかわいい子を放っといて何処にいたのかしら」
「えっ、わ、私、かわいくないです!!」
大声になると恥ずかしくなり、思わず顔を手で覆う。ふふふっ、と暗闇の中聞こえると余裕気な彼女が羨ましく感じる。
「私はかわいいと思うわよ」
「や、やめてくださいっ!私よりタシンさんの方が綺麗ですよ!!」
「あら、お世辞かしら?でも、嬉しいわ。ありがとう」
ふるふると横に振る頭を撫でられる。西魔王の時とは何処か違う胸の高鳴り。その音は心に強く響いた。


一瞬だけ思考が止まると何か次の言葉を紡ごうとする前に一人の男がタシンを呼ぶ。
「あら、そろそろ仕事に戻らなくちゃ。見つかるといいわね」
別れの言葉を述べると、凛とした足取りを見送る。

素敵だなぁ。
西魔王と共に初めて教団にやってきた時に彼女からいろいろ説明を受けたり、頼った事をは今でも鮮明に脳裏に刻まれていた。
いつか私もあんな人になりたいなと心に潜めるとたまには教団を散歩してみようかと歩み始めた。

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タシロジでほのぼのした感じのを目指して書きました。女の子っぽいふわふわした会話が書きたかっただけだったり。
ロジンちゃんにはいつもお世話になっています。感謝感謝……!タシンちゃん欲しいです。

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