ディバゲ

□白雪
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出会いは最悪。妖精王を仕留めたときのあなたの顔は今でも忘れられない。
ショックの余り唖然とするその顔に魅力を感じたから、とかそこまで下衆な考えを持っているとは思ってない。
私を捉えたあなたの瞳に惹かれたの。透き通っていてとても輝いていたあなたの瞳。
今迄私があなたを見かけても一度も私の姿を映したことは無かった。
槍と剣を交えたときのあの胸の高鳴りも初めての人の感触も一緒に買い物とかではしゃいだことも全て全てまだ覚えているんだよ?




「ヒカリ……」
記憶にある華やかで賑やかな街とは一変した静かな冷たい石が並ぶ中、オーディンはとある一個の石の前に座りこんでいた。
神界に季節という概念は存在しない。
そのため冬の日が暮れたばかりにも関わらず、白い柔肌が露出している。積もる雪は鋭く冷たかった。冷たさよりも胸の苦しみの方が大き過ぎて、冷たさなどにかまっている余裕もなかった。
ただ、ただ、ひたすら最愛の人の名前を呼ぶだけだった。



この世の生きとし生けるもの全てには必ず終わりが潜む。人間、魔物、妖精、獣、竜、そして彼女にも終わりは存在する。
会いに行く回数が増える度、変わらない自分とは反対にヒカリの姿はどんどん変わっていた。全く変わらない自分の姿はまるでヒカリに置いて行かれる様で寂しい気もした。


それから十何年、何十年、何百年と月日が流れ、気がつけばヒカリは冷たくなっていた。
「死」なんてどうでもいい。そう思っていた筈がひどく心に重くのしかかる。
冷たくなった手に触れた時、初めて人の「死」がこんなにも辛いものなんだなと知った。





「泣かないで」
閑散とした雪の中、聞こえる筈の無い声が聞こえる。
「ヒカリ……!?何処に居るの!?」
辺りを見回すも、その姿を見つけることは出来ない。遂に幻にまで夢見るようになってしまったのかな、肩を降ろすとまた目頭が熱くなる。
「私はいつだって、オーディンのそばに居るよ」
はっきりと聞こえた、ヒカリの声。勿論聞き違える訳が無い。
「ヒカ……」

振り返ると同時に視界と言葉を遮られる。瞬時にコートだと理解するが、突然の出来事が二つも来ると疑問しか浮かばない。不思議に思いつつも顔を覆うコート剥がすと、ヘグニが見下ろす形で立っていた。
「こんな所で何してんのよ、風邪引くじゃない」
「ど、どうしてここに?」
「迎えよ。迎え。余りにも遅いものだから、迎えに行きなさいってオネェ野郎が言うからよ」
うんざりした様な顔をするヘグニに心配していたんだなぁと少し心の中で反省する。やけに軽く感じるコートを羽織るとバレない様に涙を拭う。


別にこれがお別れだとは限らない。


形はなくても心はいつまでも一緒だから。


もう一度墓石を見ると、早くと急かすヘグニに笑顔で駆けた。

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オーヒカで死ネタです。
割と短め?かもしれません。
北欧神×主人公は公式のストーリーのせいもあってかシリアスなのしか思い浮かばないです……。
次はほのぼので書けたらいいなと思っています!

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