ディバゲ

□嫉妬
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光は眩しい。その眩しさは自分の持つ闇までも照らしきってしまいそうなほどだ。だが、光は闇に包まれる。光と闇対をなす存在だ。そんな闇の少女、いや闇の神のヘグニはとある感情に気づいていた。それは禁忌にも近いのかもしれない。
彼女の視線の先に居る光の少女、またの名を光の神のオーディンに想いを馳せていた。
前からオーディンに対して抱いていた嫉妬心や独占欲が気づかせてくれた。いや、本当は気づかない方が良かったのかもしれない。
太陽のような眩しい笑顔をいつも絶やさず、誰にでも優しい上、純粋で綺麗な心を彼女は持っている。
反面、私はいつもしかめっ面で人に冷たく、こんなにも醜い穢れた心を持っている。真逆過ぎる、釣り合う訳なんてない……と彼女は悲観していた。


そう思っているなら大人しく諦めればいいものの諦めきれなかった。それどころか嫉妬心をオーディン以外にもぶつけはじめる始末だった。
シグルズやヘルヴォルはともかく、オーディンがスルトと話している時のヘグニの苛立ちは著しく激しい。心なしかオーディンはスルトと話している時嬉しそうに感じていたからだ。



「ねぇ、スルト、さっきヘズがね……」
スルトと話すオーディンを横目に雑誌を見る。もちろん中身を読んでなどはいない。意識はすっかりオーディンの方に向いている。
どうしてこんな奴の方が……確かに私も無愛想かもしれないけれど、こいつも左程変わらないじゃない!むしろ頷くだけで相槌も少ないくらい喋らないのに……!
スルトに対する殺意にも近い嫉妬心は雑誌を持つ手を震えさせる。
「そういえば!この間のあれやろうよ!」
オーディンがスルトの腕を引っ張り何処かへと行くのを見送ると、彼女の苛立ちはピークを超えた。嫉妬や憎しみ、独占欲で真っ黒に濡れた心に光は要らない。けれども、光と並んでいいのは闇だけだ。炎はもっと要らない。


ヘグニは自室に戻るといつの日かに皆で撮った写真を写真立てごと壊す。ガラスの破片が手の平に刺さり、血が床に垂れるが気にしない。ゴミ箱に投げ捨てると、ハサミやカミソリ机に集め始めた。
窓際にあった花瓶に手を伸ばす、とノックが響く。
「ヘグニー!見て見て〜」
振り返ると無邪気な笑顔を浮かべるオーディンが両手に一面中のひまわり畑のジグソーパズルを抱えていた。
爽快な青空と太陽にも負けないくらいの晴れ晴れとしたひまわりは綺麗で思わず息を呑んだ。あぁ、世界はなんて冷酷なのだろう。あんな眩し過ぎて目眩がする存在に到底手を伸ばせる訳ない。隣に並べる筈がない。
ましてや、この想いが届くことは皆無に等しい……と思っていた。



けど、そんな太陽の様な彼女はもう居ない。汚れてしまったのだから、翳りができてしまったのだから。薄暗い太陽なんて必要ない。なら、一層の事……壊してしまおう。
唖然としていたヘグニに不思議そうにオーディンは彼女の顔を覗く。ヘグニはオーディンの肩を掴むと勢いよく壁にぶつける。
「いたっ……!なん……え、何その腕!?」
オーディンは壁にへと叩きつけられたことより叩きつけた血が滴る右腕に驚倒する。
次の言葉が出るよりも先に唇が重なる。唇が離れるとオーディンは目を丸くするばかりで部屋の沈黙が重くのしかかる。
ねぇ、今の気分はどう?いつの間にか夕闇を映していた窓ガラスから赤黄色が消えた。


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オチの無理矢理感が……
精進します(汗)

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