ディバゲ

□下着
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綺麗に並べられた本棚、折り目が着かないようにハンガーに掛けられた服の束。そして白と黒を基調とした至ってシンプルな内装の部屋に似つかわしくないほど幼く見える少年、ヘルヴォルは危機に陥っていた。
彼の手には、フリフリの白と金のラメ刺繍が施された下着があった。
「なんでこんな事になっているのかな……」
こんなに焦りを感じている自分にもそして女性用の下着にも驚愕する。
小さく溜息をついては、どうすればいいか分からず途方に暮れる。昨日の洗濯当番は誰だったかな……そう考えるも買い出し当番だった彼に思い出せる筈も無かった。しかし、下着は誰のだかは確信していた。
ブラジャーのカップの大きさからオーディン以外あり得ない。こう言っては失礼かもしれないが、どうせ間違えるならヘズの方よ……なんでも無い。
とりあえず、この主張してくるブラジャーを何とかできないものか……。


オーディンの部屋の前。意を決したヘルヴォルは恐る恐るノックする。
しかし、返事は無い。静かな廊下がやけに空気を重くしている気がしてならない。
もう一回ノックをするものもやはり返事はない。どうやらオーディンは不在の様だ。
しかし、隣の部屋のヘグニやヘズは多分居るだろう。もしもこの状態で出くわしたら……?
想像するだけでも恐ろしい。居ないと分かったなら一旦ここは引き上げるしかない。誰にも見つからないことを祈り、慌てて部屋に戻ろうと足を早める。


しかし部屋の前に扉を見つめているスルトが立っていた。こちらに気づいたのか目が合う。
「……どうした、お前疲れているのか?」
無表情のまま珍しく彼の方から口が開かれる。視線は少し下、ヘルヴォルが持っている物に注がれていた。
「これは違うよ!?盗んだとかじゃないからね!?!?」
慌てて後ろに隠すも不自然過ぎた。普段焦る事なんて滅多にないのだから、疑われるのも当然なくらいだ。
「……まぁ、ちょうどいい。ところで、これはお前のか?」
すっと差し出されるのは白が眩しい男性用下着……ブリーフだ。確かに小学生までなら普通に履いていてもおかしくはないけれども……
「ボクじゃないからね!?ボクそんなの履かないからね!?!?確かに見た目は小学生ってよく言われるけれども、心は大人、頭脳も大人、いやむしろそれ以上だからね!?」
息継ぎもままならず、珍しくも言葉に力を込める。こう見えてもプライドは低める気もないし、立場だって余裕を持ってこの個性が強過ぎる北欧神の中に居たいのだ。そもそもボクは基本的に傍観していたいのであって、こんな恥を晒すなんて事はこれから先も御免だよ。
「そ、そうか……。」
きっと彼は平然を装う努力をしているのだろう。
しかし、それも虚しく成る程、目を丸くし口調からも焦りが見える。しまった。
逆に変に強く否定をするのは肯定とも取れてしまう可能性があるのだ。そのいい例が北欧神一のツンデレ、ヘグニがそうだった。
「なんだか騒がしいわねぇ」
シグルズが二人の間を引き裂くかのように割り込むと、大層不思議そうな顔で二人をまじまじと見た。
「なによあんた達、下着なんか持っちゃって」
真顔で言われた瞬間の二人の顔はよほど酷かったのか、シグルズがぷぷぷと腹を抱えた。後にこの話は噂好きのオネェによってオーディンを始め他の北欧神にも広まり、しばらくネタにされたとかされていないとか。





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ただくだらない話を書きたかっただけだったり。

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