ディバゲ

□眠気
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「あのね」
ふわふわの毛布にふわふわのぬいぐるみ、髪の毛が同化するんじゃないかと思うくらいに幸せそうに静かに寝ているヘズにヘグニの鋭い言葉が飛ぶ。
力が入っている強目の言葉と目つきの悪さからイライラしているのは、一目瞭然だった。
いつもならシグルズが起こしに行っている所なのだが、今日はシグルズはヘルヴォルと朝から買い物に行ってしまったのだ。
もちろんスルトは戦力外でオーディンは散歩だ。
特に誰かに起こせと言われた訳じゃない。しかし起きる気配も無く、すっかり太陽が真上に昇ると居ても立っても居られなかった。そして、今に至る。


試しに毛布を揺さぶっても、爆音で目覚まし時計を鳴らしてみたが、寝返りを打つだけで起きる気配はさらさら無かった。
「今、何時だと思っているのよ……!」
そもそもヘグニがヘズを起こしに行ったなどと言う事実がヘルヴォルやオーディンの耳にでも入れば、珍しいねとか自分も自分もとか言われるに違いない。
それも面倒だなぁと思っての行動だったが故にさらに面倒くささが募り、イライラが溜まっていた。
もう起こすのは諦めよう。
そう何度も思うも、焦ったさに近い何かが決断させてくれない。

「ほーら、起きなさいよ」
イライラから一転諦めモードに入り、ヘズの肩を揺さぶる。もちろん返事は無く、自分の吐く溜息しか聞こえない。
大人しく自室に戻ろうと立ち上がると、毛布の隙間から伸びる腕がヘグニの腕を掴んだ。
「へっ!?ちょっ、あ、アンタ!おおお、起きているなら返事くらいしなさいよ!」
いきなり腕を掴まれたことに驚いて思わず裏返った声が恥ずかしかったのか、ヘグニの頬がみるみる赤くなっていく。
「んー……だって、まだ眠いんだもん」
声はとても眠そうにかつダルそうなのだが、手は振りほどこうとするヘグニの腕を離そうとしなかった。
「まだ眠いって……アンタ、もうお昼よ!」
「でも、眠い……」
半開きのままの瞳が、伏せ気味の長いまつ毛がヘズの眠気を物語っていた。どうやら意識はまだ半分夢の中に居るようだった。
「どこ行くの……?」
「どこって……アンタがちっとも起きないから起こすのをやめようとしただけよ」
まぁ、起きたならもう私は部屋に帰るわ。そう付け足すとヘズがヘグニの腕を引っ張る。
「ヘグニが居なくないるの……寂しい」
「はぁぁ!?」
思ってもいない言葉に疑問を抱きつつも、ヘズが引っ張って来る。とても寝起きだとは思えない力強さにヘズも一応神なんだなと自覚される。抵抗することも無く、毛布の中に入れられる。
「ちょっと!私、寝るつもりないんだけど!」
隣のヘズに視線をやると、瞼は閉じられ、それどころか微かな寝息が聞こえる。まぁ、仕方ないか。小さく溜息をついては、また幸せそうに寝るヘズにつられて笑った。


「あらー、仲良く寝ているわね」
「本当だ、珍しー」
「え、何々!?二人だけでずるい!」
「……」
「ちょっ、何でスルトちゃんまで寝てるのよ!?」


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ほのぼのとした百合が書きたかっただけです。皆お布団が好き。

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