ディバゲ

□猫
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「ねぇねぇねぇ、見て!見て!」

帰ってきたと同時に、慌ただしく見ることを強要してくるオーディンにリビングで各々の活動をしていた一同の視線が集まる。

「猫……?」
枕を抱えつつも、むくりと起き上がるとヘズがオーディンの元に寄る。
ふわふわとした真っ白な毛を纏った猫がオーディンの腕の中でみゃーと声をあげる、興味深そうに見つめる瞳が猫目とぶつかると、手を伸ばす。ちろり、と小さく舐めると一瞬驚くも触りたいのかまた手を伸ばす。
「えぇ、あんた猫拾ってきたの?」
水面のようにツヤツヤと光る指先に息を掛けていた。ついさっきまで、新色なのよとご機嫌だったのに、一変してどこか面倒くささを感じられる声色だった。
「かわいい……」
ヘズが猫の頭を優しく撫でると猫も気持ち良さそうに喉をならす。
「でしょでしょ!?空き地の段ボールに居たから拾ってきちゃった」
「拾ってきちゃったってね……誰が面倒見るのよ。」
ファッション雑誌を捲る音に混ざる溜息。目をそらしたままそっけなく言われたのにも関わらず、ただ悪気はなさそうにオーディンはニコニコと笑顔を浮かべていた。
「どれどれ、僕にも見せてよ」
流行りの推理小説を読んでいたヘルヴォルがオーディンとヘズに寄る。
ヘズは猫を気に入ったのかいつの間にか猫を抱きかかえていた。布団の様な温もりが彼女の好意を寄せたのだろうか。
「ほんとだ、子猫だね。もしかして飼ったりするの?」
ヘルヴォルの何気ない質問にヘグニが狼狽し、えっと声を上げる。
「私は反対よ!猫の世話する程手が空いている訳じゃないのよ」
「アタシも猫の毛とか着くのは嫌ね〜」
反対派の意見が一方的に飛ぶと、ヘズは頬を膨らます。
「私、飼いたい」
「私も!私も!それに世話なら私がやるもん」
オーディンやヘズまでもが強情を張れば、対立は深まる一方だ。
「アンタねぇ、そう言って……」
言い争いにまで発展しているのにも関わらずヘルヴォルはあははと笑いながらさっきから微動だにしないスルトの隣に座った。
「スルトはどう思う?」
「……どっちでもいい」
顔色を一つも変えずに言い残すと自室へと去ってしまった。ヘルヴォルはそんなスルトの背中に何も声をかけることなく見送った。


時刻は11時になる数分前。スルトは生乾きの髪をそのままに誰も居ない広間を見つめていた。
この時間に誰も居ないのは珍しい。いつもなら2、3人くらいは居る筈だった。テレビから聞こえる賑やかな話し声だけがフローリングに響いていた。
無性に何か飲みたい、そう思ったスルトは冷蔵庫に手を伸ばす。取っ手に触れると同時にみゃーおんとの鳴き声が聞こえる。
視線をやると猫がスルトの足元で鳴いていた。スリッパも履いていない裸足の上ですりすりとジャージに身体を擦り寄せる。
暫く猫を見つめているだけだったスルトは、猫を見つめるのをやめて、冷蔵庫に手を伸ばしては牛乳を取る。誰かが開けたであろうマグロの缶詰の空にそっと音をたてずに注ぎ込む。
そして猫が牛乳を舐めるのを静かに見つめていた。
「……うまいか?」
みゃーと返事が返ってくると無表情のままだがどこか嬉しそうに猫の頭に触れた。



(え、何スルトも猫気に入っているのよ!?)
(しっ……!聞こえるじゃない!)








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ヘズやオーディンとスルトが動物好きでヘグニやシグルズが動物嫌いなイメージ。ヘルヴォルは中立の立場にいそうかなと

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