東京レイヴンズ

□パン屋さんのラスク
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当たり障りのない話をしながらパンを選び、先に名前がレジに並んだ。
続いて冬児。

「……多くないですか」

「今日は夜勤だから、詰所の人で食べようと。
霊災を相手にすると、体力も呪力も使うから」

「…なるほど」

店員が名前に商品を手渡し、会計が終わる。

名前は、じゃあ、と軽く挨拶をして店を出ようとした。

が、

「少し、待ってください」

と、冬児が引き留めた。

なに?と振り向くうちに、冬児はレジ横のバスケットから、ラスクを一袋とる。

「これだけ、先に会計してください」

と店員に渡し、さっさと会計をするが、
その行動の意味をわかっているのは冬児しかいない。
彼はレシートを受けとると、裏に何か書き付け、ラスクと一緒に名前に渡した。

「えっと…これは?」

「ここのパン屋はラスクが美味いんですよ。
嘘じゃなかったら連絡してください」

「…生意気」

なんとでも、と口角をあげ、冬児は名前に挑発的な視線を送った。

彼の視線、言葉は、何重にも意味をもっているようだった。

――土御門夏目よりもこっちの方がよっぽど相手にしたくないな。

名前は苦笑しながら、
レシートを上着のポケットに入れた。

呪力が強く、技にも長けているのは夏目だが、対人としての呪術者は真っ直ぐすぎてはいけない。

ぞくっ、と身震いするのを楽しみつつ、今度こそ名前はパン屋をあとにした。
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