その他
□年上の君は摩訶不思議。
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「スクールには、慣れた?」
廊下で見かけた花礫を呼び止めた名前は、少し迷った感じでそう言った。
花礫は思わず眉をひそめる。
彼が今輪挺にいる理由は、スクールを脱走したからに他ならない。
輪コースの道を断たれたとはいえ、このあとの身の振り方が定まるまでの臨時措置なのだ。
慣れたか、と訊かれても、正直困る。
それが、貮號挺闘員とはいえ、今まであまり接点がなかった名前からなら尚更。
口下手な名前も、訊いてから困ったように苦笑した。
「…スクールは、いろんな人がいるでしょう。
ある意味、輪よりも多彩な…。
慣れるのも大変かなって、思ったんだけど」
と、言い訳するように言葉を紡ぐ。
花礫はそれで初めて、名前もスクールの卒業生であり、平門や朔の同期なのだと思い出した。
「で、何?先輩面しようっての?」
意地の悪い言い方をする。
自分でも嫌うような、子どもっぽい口調だと自覚して、舌打ち。
「そうじゃ、ないけど」
また、困った顔で名前が言った。
「花礫くんは…透明な壁をつくる感じがするから」
わかるような、わからないような。
そんな言い草だった。
しかし花礫は、心臓がドキリと鳴るのがわかった。
見透かされているというのではない、転がされているような。
それでいて不快ではないような感覚。
「…お前も、子供扱いするわけ?」
かろうじて、反抗してみたが、効果はない。
不思議な女、と思っていたのに変わりはないが、何か認識が変わったのを感じながら、花礫は名前の微笑に舌打ちをする。