その他
□くすぐる方が悪い。
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平門や朔の同期である名前は
直属の上司である、輪総督・時辰の命令で研案塔にきていた。
ミッションは、時辰が独自に採取したサンプルを燭に届けること。
今はそれも終わって、帰路につこうとしているところである。
しかし、廊下を歩く彼女を呼び止める者がいた。
「久しぶりだな、名前」
「平門…」
そうだね、と名前が軽く頷くと、平門は口に手を添えて微かに笑う。
「時辰殿とは仲良くやってるか?」
「うわー、胡散臭い」
「……失礼だな」
「普通だよ。たまに…手に負えないことがあるけど。
平門みたいなペテンじみた性格よりはマシ」
「……そうか」
平門は苦笑して、自分より低い位置にある名前の顔を見下ろした。
昔からズバズバと物を言う彼女が相変わらずなので、不思議な懐かしさと、妙なイタズラ心が生まれる。
「でもまぁ、兄さんのとこが嫌になったら、俺のところに来い」
と、平門は名前の耳元に口を寄せた。
名前の顔がみるみる赤くなる。
「ほんと、平門って……」
「ん?」
サラリ、手袋のままの手が、髪を撫でた。
耐えきれず、名前は振りほどいて歩き出す。
「時辰殿によろしく伝えてくれ」
「平門のバカ!知らないっ!」
平門は笑顔で見送りながら、次会ったときはどんな風に声をかけようかと考えてニヤリと笑った。