その他

□いってらっしゃい。
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「無理……は、もうしてるか。
うん、まぁ…ちゃんと見てるから」

「おう」

地方大会の応援にやってきた名前に、山崎は優しい笑みで返事をする。

右肩のこと。
山崎の夢。
それらをわかって、送りだしてくれる彼女に、心底惚れていた。

「じゃあ」

と、名前が観客席に向かおうとする。

しかし、それを、ある人物が止めた。

「うおぉぉっっ!!山崎先輩!
その超美人な美少女、誰ッスか!!」

鮫柄水泳部1年・御子柴百太郎だった。

山崎はハアッと大きなため息をついて眉間を手で揉む。
名前がキョトンと首をかしげて百太郎を見ていると、
彼の頭を大きな手がガシッと掴んだ。

手の主は名前も知っている。
部長の松岡凛だ。
その少し後ろに、山崎が泳ぎを教えたという似鳥愛一郎もいる。

「美人な美少女って…“美”がかぶってんだろ…」

「凛先輩!!だって!この人メッチャかわいいッスよ!」

「馬鹿、宗介の彼女だよ」

「彼女!!山崎先輩、彼女居たんスか!!」

「も、百くん、落ち着きなよ…」

ワチャワチャと騒ぐ三人に、山崎は何度目かのため息をつく。

チラリ、隣に立つ名前に視線をやると、バチッと目があった。

「よかったね」

と、彼女は笑った。

――コイツには敵わないな。

山崎は苦笑しながら彼女の頭を撫で、
チームメイトたちに近づいた。
名前はそれに気付き、送りだしてくれる。

「名前に手出したらタダじゃおかねぇからな」

「名前さんって言うんスね!」

「覚えんじゃねぇよ」

相変わらずワチャワチャしたまま、彼らは行ってしまう。

名前は安心して、観客席に向かった。

少し振り返ると、山崎の周りは笑顔のチームメイト―仲間たちで溢れていた。
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