ハイキュー!!

□小さな庭
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美化委員の仕事は、中庭の花壇の世話だ。
4月の今はチューリップが咲いている。
2年で美化委員である名前は、昼休みにも関わらず花壇の様子を見に行く。
花は好きだから、苦ではない。
むしろ、花を相手にするのは気楽でよかった。

しかし、いつもあまり人がいない中庭に、今日は先客がいた。

男子高校生の平均よりは少し低めの身長。
よく目立つオレンジ色の髪。
遠くから見ても“焦ってるなぁ”とわかる様子で、彼は花壇の前にしゃがみ込んでいた。

「どうしたの?」

名前が声をかけると、彼は勢いよく振り向く。

「あっ、いえ…そのっ」

「花壇、どうかした?」

「ボールが、こっちに飛んできちゃって…花、大丈夫かなって」

「ボール?」

彼に言われてはじめて、名前は彼の手に収まるものを認識した。
青とイエローのボール。バレーボールだ。

「外で練習してるの?昼休みに?」

「あ、はい…。
俺、今バレー部の入部が認めてもらえてなくて…」

彼は、今までの経緯を一通り話してくれた。
他人事だからだろうか、名前はクスクスと笑ってしまう。

彼は少しムッとしたようだが、
構わずに、名前は花壇をざっと見る。

「花ってね、人が思ってるより強いんだよ。
だから、大丈夫」

と言えば、彼はコロリと表情を変えて安心した。

単純だ。そしてきっと、強くなる。

「君も、自分や他人が思っているよりは強いとこがあるはずだから、
頑張ってね」

名前は、ポケットから小さな飴玉を出して渡しながら言う。

小さな庭で出会った彼が
小さな巨人になるかどうかはまだわからないけど。

なんとなく生まれた小さな思いを託して。
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