ハイキュー!!
□策略家、策略か。
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「あー、やっちゃった」
音駒高校バレー部の臨時マネージャー・名前は、
びしょびしょになった自分のTシャツを憎々しげにみつめた。
外の水道でドリンクケースを洗おうとしたら、蛇口が反対向いていて…この有り様である。
合同合宿の間だけ、と同じクラスの犬岡に頼まれて引き受けたマネージャー。
中学時代にサッカー部でやっていたから初めてではないが、
久々だと些細な失敗をしてしまうらしい。
今のところは部員に迷惑はかかってないはずだが、早々に勘を取り戻さなくては。
名前が気合いをいれ直したときだった。
急に後ろから、ジャージが差し出された。
名前は、
梟谷のものだと一目でわかるジャージを見て、そして差し出した人を見た。
「あ、えっと、赤葦先輩…」
黒尾に教わった名前を、頭の片隅から引っ張り出す。
どうやら間違えなかったようで、
ジャージの持ち主―赤葦は頷いた。
「そのままだとちょっとマズいから、暑いかもしれないけど上から羽織っといた方がいいよ」
「えっ、あ…」
赤葦がジャージをもう一度ぐいっと強調する。
マズい、というのは、Tシャツが濡れて透けている…ということだろう。
名前は彼の言葉の意味を理解し、顔を赤くしながらジャージを受け取った。
「ありがとうございます」
「いいえ。
慣れない仕事は大変だろうし、うちのマネージャーとか、困ったときは頼りなよ」
「はい」
赤葦は、じゃあ、と体育館の方に行ってしまった。
名前はずいぶん大きくてブカブカのジャージを着て、仕事に戻った。