ハイキュー!!

□遠回しは遠回り。
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名前は今、とても困っている。

というのも、図書室の棚が天井に届くほど高いというのが一番の理由だ。

もちろん可動式の踏み台は常備されているが、
動かすたびにキーキー、ガタガタと鈍い音のするそれを、静かな図書室で動かす勇気はなかった。

諦めようか、と名前がため息をついたとき、
ふいに、自分をすっぽり覆う人の影ができた。

「これか?」

「あ…はい」

とってもらった本を受け取りながら、名前は影の主を見やる。

それは、彼女も見知った人物だった。

澤村大地。
一つ先輩の、男子バレー部主将である。

名前は中学の頃、バレー部でリベロをしていた。
そのため、同じ中学校だった西谷と仲が良い。

西谷は会うたびに澤村を自慢気に(自分のことのように)話してくれるので
その縁でちょっとした知り合いなのである。

だから、というわけでもないが、名前は改まってペコリと頭をさげた。

「ありがとうございました」

「どういたしまして。
いやさ、背の小さい苗字がうんうん唸ってるの見たら、なんか気の毒になっちゃって」

「…うう」

「あ、いや、馬鹿にしたわけじゃないぞ」

「…わかってます」

「他にはいいのか?とってやるぞ」

澤村はニコニコしながら言った。

そういう優しいところがあるから、後輩にも慕われるんだろうな…
とぼんやり考えながら、名前はじゃあ、と別の本を指差した。
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