ハイキュー!!

□ 揚げ出し豆腐へのこだわり
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片栗粉の方は、もっちり。
小麦粉の方は、さっくり。

どちらもそこそこ美味しく作る自信はある。
そして、別に岩泉に恋心を抱いているとかでもない。
しかし、いつも及川の影で苦労ばかりしている彼を労うために、
どうせなら好きな方を使いたかった。

――こんなことなら、あらかじめ聞いておけばよかった。

と少し後悔した、その時だった。

「スマン、苗字。氷あるか?」

噂の岩泉が、姿を現した。

「えっ!?あ、あるけど…どうしたの?誰か怪我?」

色んな意味で驚きつつ、冷凍庫から氷を用意する。

「あー、いや。及川を観に来てた女子が熱中症でしんどいとか言ってよ。
顔色も悪いし、放っとくわけにもいかないからな」

「うわー、大変。今日、熱気がすごいもんね。
っていうか、及川が取りに来たらいいのに…なにやってんの?」

「その女子に付き添ってる。戻ったらしばいとく」

「うん」

名前は厚手のビニールに氷を入れてきつく縛り、岩泉にそれを渡した。
また及川のせい(厳密には違うけど、そういうことにしておく)で無駄な仕事が増えた彼。
また、片栗粉か小麦粉か問題が浮上する。

結局、名前は、厨房を出て行きかける岩泉を呼びとめた。

「岩泉、あのさ」

「なんだ?及川に伝言とかか?」

「いや、違くて…。
その、夕飯の揚げだし豆腐、片栗粉のやつか小麦粉のやつ…どっちがいい?」

ちょっとしたことを聞くだけなのに、なぜか緊張した。

しかし、岩泉の去り際の言葉は、
名前をさらに困らせることになるのだった。


――「どっちでもいい。苗字が作る料理は美味いからな」


(どっちでもいい、が一番困る。)
(そんなにサラッと褒めないで。)
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