弱虫ペダル
□なんだかんだ大好き
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※電話、故に会話オンリー。
金城→「」/夢主→『』
『今週も部活?』
「ああ、そうだな。
日曜は午前練だけだが、午後は自主練で少し遠出をしようと思っている」
『ふぅん』
「すまない。IHが近いから、少しの時間も惜しい」
『ううん、いいよ。
金城が自転車頑張ってるの、私も嬉しい…』
「そう言ってくれると助かる」
『…なんて、言うと思ってるのっ』
「…!」
『私、そんなに物分かりのいい女じゃない!
今年は受験生だし!
大学だって別々になるかもしれないのに!』
「…」
『ただでさえ二人っきりで居られる時間は少ないんだから、休日くらい会いたいの』
「…ああ、そうだな」
『金城は自転車と私、どっちが大事なのっ?』
「…」
『金城っ』
「…そんな質問をさせてしまってすまない」
『…うっ』
「寂しい思いをさせているのはわかっていた。
助かる、なんて言って甘えてしまって申し訳なく思う」
『……そんなこと…』
「だけど、俺にとって今年のIHが最後だ。
大切なのも事実なんだ」
『…うん』
「待っていてくれると、嬉しい」
『…うう』
「待っているのは、嫌か?」
『…』
「俺のこと、嫌いになったか?」
『……』
「名前?」
『ズルイよ』
「そうか?」
『うん、ズルイ。
嫌なわけ、ないじゃん。嫌いになるわけ、ないじゃんか』
「…」
『私の方こそ、ごめん。
いじわる言った』
「いや、ため込むよりも、言ってくれた方がいい」
『ありがと』
「ああ」
『…』
「…」
『…あのね、』
「ん?」
『好き』
「…」
『好き、だからね』
「…ありがとう」
『…なにそれ』
「いや、どうにも、素直な名前には慣れないなと思っただけだ」
『…しらないっ』
「そうか」
『……もういい、私寝るからっ。
おやすみ!』
「ああ、おやすみ」
『明日寒くなるみたいだから、怪我しないように気をつけてねっ』
「お前も、風邪ひくなよ」
『……ああ、もう、ズルイ!
今度こそおやすみっ』
ブツっ
このあと金城の携帯電話に、
『暖かくして寝ます。ありがと』
とメールが入った。
金城は柔らかい笑みを浮かべ、自分も寝仕度を始めるのだった。