その他

□葛藤すべき青い僕らですし
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宗介は自販機に硬貨を投入し、すこし乱暴にコーラのボタンを押した。
背の高さとガタイの良さのせいで、“不機嫌そう”を通り越して“コワイ”オーラを出している。

理由は一つ。

「先輩の彼女さんスッゲェかわいいッスね!
お名前なんて言うんですかっ!?
あっ、俺は御子柴百太郎ですっ!」

「えっと…苗字名前です…」

「名前さん!素敵なお名前ですね!!」

「あ、ありがとう…」

大会の応援に来ていた恋人が、後輩に見つかった。
そして、何とも近い距離で話している。

宗介は心の中で舌打ちしつつ、コーラを喉に流し込んだ。

コイツは俺のだ、と、二人の間に割り込みたい気持ちもある。
名前は自分の応援に来たのだ。
だがそれと同時に、カッコつけたい自分もいるらしい。
余裕ぶりたい、そんな年頃なのだ。

青い葛藤を自覚して、もう一度舌打ちをしたとき。

名前がススッと寄ってきた。
ちらりと百太郎に視線をやる彼女は苦笑いを浮かべている。

「コーラ、一口ちょうだい」

「飲みたいならもう一本買うか?」

「ううん、ちょっとでいいの」

なんだか喉が渇いて、と名前はペットボトルを手に取った。
付き合って長くても、間接キスは緊張するがお互いに表情には出さない。
これも青さだろうか。

「百太郎くんは、しゃべってて楽しいし面白いけど」

ふと、名前が言葉を紡ぐ。

「宗介は、一緒にいるだけで、好き」

「……は」

「だから、ヤキモチやかなくていーよ?」

ふふ、と柔らかく笑う彼女。

宗介はしばらくポカンとしていたが、どうやら見透かされていたらしいと気付くと頬をかいた。

「…そんなんじゃねーよ」

と、反抗してみるけど、たぶん意味はない。

反抗なんてしなくても、見透かされて嫌な気は全然しないのだ。

どことなく薫る青さに、二人は顔を見合せて笑うのだった。
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