その他

□紙ヒコーキが世界を変える
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※『素直じゃないところもかわいい』の夢主


「鬼灯くん…えっと、これは…」

「悪戯っ子にはお仕置きを、というのは地獄では当然のことですよ?」

「だから、すみませんって…」

名前は両手を鬼灯に掴まれて壁に押しつけられている。
目前に迫った鬼灯は相変わらずの無表情で、それが尚更恐ろしい。

どうしてこうなったかというと、ほんの数分前に遡る。

二人はそれぞれ自分のデスクで事務仕事をしていたが、名前はふと、少しも気を緩めない鬼灯が心配になった。
それで、シュレッダー行きの山から一枚紙を抜き取り、紙ヒコーキを作ったのだ。
鬼灯目掛けて真っ直ぐに飛んだヒコーキは彼の額にビシッとヒット。

…したところまではよかったが、それから鬼灯は黙って立ち上がって名前の手を取ったのである。
そこからは冒頭の通りだ。

「名前さん、貴方はこんっなしょーもないことをする方でしたか?」

「い、いえ…ほんの出来心です」

ですよね、と頷く鬼灯は、名前に悪意があると思っているわけではない。
だが、無表情のせいで名前にはそんなことわかるものではない。

「悪戯っ子には」

と、さっきと同じ言葉を繰り返して、鬼灯はぐっと距離を詰める。
キスされる、と思って、名前はぎゅっと目を瞑った。

――が、

結局鬼灯は何もせずに拘束を解いた。

「えっ」

名前の口からマヌケな声が洩れるが、鬼灯は構わずに自分のデスクに戻ってしまう。

そして書類に目を通しながら、

「心配なさらずとも、私は貴方が一緒に居るなら平気です。
あと、たまに“そういう表情”を見せてくれるだけで充分ですよ」

と言った。

名前はまだマヌケに呆けていたが、やがて意味を理解すると顔を火照らせた。

――鬼灯くんを見る目が変わっちゃうじゃない。

と心の中でブーたれたが、よくよくきっかけを思い出すと自分の飛ばした紙ヒコーキだったから、
よけいなことするんじゃなかった、と思いながらデスクに着くのだった。


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