二次創作

□僕だけが君を幸せにできる
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※現パロ
※三郎・雷蔵→高1 文次郎→高2 
※前世では鉢文←雷




「すみません、潮江先輩。雷蔵の具合があまり良くなくて…もしかしたら風邪を引いているかもしれないので念のため付きっきりで看病したいのですが…」
「分かった、なら明日映画に行くってのはなしだな。不破に早く良くなれと伝えてくれ」
「…はい、では失礼します」

鉢屋は一瞬何か言いたそうな表情を浮かべたがもう一度すみませんと頭を下げて踵を返し、不破が待っているであろう場所まで走り去っていった。
俺はといえばため息をついて放課後特有の教室の静けさの中、自分の席の椅子に腰掛け真っ赤に燃えるような夕日を窓からぼんやりと眺めながら再びため息をついて目を閉じる。



半年前、俺が高校の2年に進級した今年の春に新入生の鉢屋に恋をした。
学生の本分は勉学だと考えてうまれてこのかた恋や愛などにうつつを抜かしたことなどなかったのに桜の花が舞う木の下にいた鉢屋の姿に胸がざわついてしばらくその様子から目を離すことが出来なかった。それからというものの食堂や廊下ですれ違う度、目で追っては胸が高鳴り病気なのだろうかと医学を勉強している親友に相談すればそれは恋だと教わってようやく自分は鉢屋に恋をしているのだと自覚したが、この想いを伝えるのは躊躇われた。そもそも鉢屋と俺とでは接点がなさすぎた。委員会の集まりなんかで顔は合わせるが話すなんてことはない。なのになぜ俺はあいつを好きになったのかと聞かれれば首を傾げざるおえなかった。

一目見た瞬間懐かしさやら愛しさが込み上げたからとしか言い様がない。とにかく接点がない上にお互いが男同士なのだ、きっと告白しても断られて気持ち悪がられるのがオチだと思いこの気持ちは封印しようと決意した矢先、二人っきりで委員会の予算を決める際もめにもめてついうっかり口を滑らせて好きだと伝えてしまった。確実に嫌われたと顔色が真っ青になって体の震えが止まらず俯いたまま時間が過ぎいたたまれなくなって教室から出ようとした瞬間、私も貴方が好きです。と言われ信じられなくて鉢屋の頬を何度も叩いて夢じゃないか確認したのは今では笑い話だ。




晴れて恋人になったはいいがそこからが問題だった。
鉢屋には不破雷蔵という従兄弟がいた。そいつは鉢屋の顔と一緒…同一人物なんじゃないかと思うほどそっくりな顔立ちをしていて同じ高校に通っている1年だ。
鉢屋は悪戯好きのやんちゃな奴だが不破はおとなしい性格だが分け隔てなく親切という真逆な性格ながら仲がとても良く、一応恋人の俺よりも不破になにかあればそっちを優先してしまうほどだ。

だから今までデートなんてもってのほか、遊びにも行ったこともないし一緒に下校したことがない。不満がないとは言えないが女のように嫉妬丸出しで文句など言えるはずがないのでなるべく平静さを失わないようにまた次の機会にな、と何度言っただろう。

(本当は俺よりも不破が好きなんじゃないのか…)

遊ぶ約束をしていてもことごとく不破の用事や体調不良などで潰れてしまったせいで何度不破を恨んだだろうか。いや、不破が悪いわけではない、自分の心が狭いのだと自己嫌悪に陥り頭を振る。
いつまでも学校に居残るわけにもいかないと重い腰を上げ教室を出ようとすれば入り口に人の影が映っていた。誰か忘れ物でもしたのかと顔を上げればそこには鉢屋…いや、相変わらず穏やかに微笑む不破がそこに立っていた。
さっきまで勝手に黒い感情を抱いていた相手に出くわしてしまい心の中で舌打ちするがすぐに、ん?と首を傾げ不破をまじまじと凝視する。
なぜ不破が2年の教室に、しかも放課後に来たのか。そもそもこいつは体調が悪くて鉢屋が付き添って一緒に帰ったのではなかったのかと尋ねようと口を開いと同時に不破の声がそれを遮った。

「僕が憎いですか?」
「……は、」
「ですから僕が憎いでしょう、三郎を独占してますからそれは当然なことです」

かけられた言葉が一瞬理解出来ず目を丸め目の前の人物を見つめれば相変わらず笑顔を絶やさずに一歩俺の方に歩んでくる。
その姿に得体の知れない恐怖を感じ一歩後ずさる。が、俺が一歩下がるたびに不破が歩んでくるのでしばらくその攻防を繰り返す。
いい加減何をしたいのか分からず文句を言おうとした瞬間後ろに軽い衝撃を受けて振り返ればそこには壁。チッと再び舌打ちして前を向けば眼前に不破の顔があり思わず息をのむ。

「でも潮江先輩が悪いんですよ?貴方が三郎と付き合ったりするから…僕の方が先輩のことずっと前から好きだったのに、酷いです」
「ふ、不破…?お前何言ってるんだ俺が好きってっふざけるな、この手を離せ!」

まるで逃げられないようにするために両腕を掴まれ意味のわからないことを言われ混乱する頭でとりあえずこいつから離れなくてはと考え体を動かすがビクともせずせめてもと思い切り相手を睨む。

「ねぇ先輩、先輩は三郎が一番好きでも三郎にとっての一番は僕なんです。先輩はそれでもいいんですか?」
「や、めろ…」
「可哀想な先輩。永遠に僕に嫉妬して苦しみながら三郎と付き合っていくのですね」
「やめろ、やめてくれ!それ以上いうな…っ」

これ以上現実を突きつけられたくなくて耳を塞いでしまいたかったが両腕を拘束されているためそれが出来ず首を横に振って懇願するしか出来ない。
俺のそんな様になにがおかしいのかさらに笑みを深め耳元で囁いた。

「僕なら潮江先輩を一番に考えて愛してあげます。だからどうか今度こそ僕を選んでください…ねぇ、文次郎先輩」



おわり



補足的なもの

室町では雷蔵は大人しく身を引いて三郎に潮江さんを譲ったけど今世でもまた潮江は三郎を選ぶのかよ!ってなってぷっつんしてことごとく二人の仲を邪魔します。そして隙が出来た瞬間奪いにいきます。
雷蔵は記憶ありで三郎と文次郎は記憶なし。
昔からなぜか雷蔵に逆らえない三郎設定。
ドSヤンデレな不破さんが好きだ…。





title 確かに恋だった 様より

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