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□花吐き病
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「っ、、っ…!」「ど、どうしたのシロエさん、大丈夫?」
喉を逆流してくる異物。ああまた出てくるのか。
「大丈夫、です。ちょっとすいません…」
慌てて離れてひと気のないところでうずくまる。吐き気に似たものを感じてえづく。ゆっくりと口から落ちる、花弁。椿の花だ。
僕がかかったものは、花吐き病という片思いをして苦しくなったときに花を吐いてしまうという難儀な病気らしい。
「…治療法は両思いになるだけ、」
そんなの、無理だろう。だって僕が好きな人はアイザックさんをみてる。…このまま苦しむか、それか彼女もアイザックさんに片思いをしているようだし。どうやったって叶う恋でもない。腹黒メガネなんて呼ばれてる僕がアイザックさんに敵うわけがないし。
卑屈な考えばかり思い浮かぶ。どうすればいいのか解決策が全くない。
…いっそのこと、花吐き病に感染させてやろうか。
「…両思いにならない限り治らない病気なんだから」
それもいいかもしれない。同じ苦しみをもつ者同士親密になれるかもしれない。花吐き病は、花吐き病にかかっている人が吐いた花に触れることによって感染する。…僕はそっと地面に落ちた花弁を拾って愛しい彼女の元へと向かった。
 

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